不識塾 課題図書 -資本主義はなぜ自壊したのか-

 

 2014年の月一企画は中谷巌氏が主催する「不識塾」の課題図書をテーマに我々を取り巻く社会や歴史について考察を深め、自分と未来を識る手助けにしようと決めた。

 

 

2回目となる今回のために厳選した1冊はこれ。

 

 

資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言

資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言

 

 

 

中谷巌氏と私の出会いは学生時代にまで遡る。

 

 

と言っても、直接面識があるわけではなく、大学1年生の時に履修した「マクロ経済学」の教科書の著者であったというだけの話。

 

 

当時から小難しい経済学をわかりやすく伝える名手だと思ったし、その後大ベストセラーになった「痛快!経済学」はまさに面目躍如の一冊で、一般読者にも経済の動き、日本という国の立場をわかりやすく多くの人に伝えることとなった。氏はその後も超一流企業の取締役や大学教授、政府内閣の経済改革を担当する委員ともなり、まさに日本経済をマクロの観点から変革する改革者の一人であった。

 

 

その氏が2008年秋に起こったリーマンショック後に上梓されたのがこの一冊。

 

 

書籍の帯に書かれている言葉が重く、深い。

 

 

リーマンショック格差社会、無差別殺人、医療の崩壊、食品偽装。すべての元凶は『市場原理』だった! 構造改革の急先鋒であった著者が記す『懺悔の書』」

 

 

小泉政権時代に一世を風靡した「改革なくして成長なし!」というスローガンの下に進められた改革は一部において大きな成果を残した反面、日本社会の劣化ももたらした。著者はその一翼を担ったことに自責の念に駆られ、「アメリカかぶれ」であった自分を戒め、経済学以外の歴史や宗教、文化、哲学などリベラルアーツと呼ばれるより広く深い「知の世界」を学ぶことによってこの結論に辿り着いた。それが結果として「懺悔の書」であり、当時の「総括の書」と言えるものだった。

 

 

資本主義や新自由主義、市場や競争・・・

 

 

我々が住む当たり前の社会の仕組みやそれを支える原理、怒濤の如く進んでいくグローバル化と相反するローカライゼーション、過去と未来の両方をしっかりと見据え、現状、物事を根本から見直し、 分析、提言がなされている。

 

 

数百年も世界的に続いてきた資本主義に代わる新しい社会の仕組みはそう簡単には見つからない。

 

 

それも十二分に理解した上で新たな考え方や仕組みを提言することは素人目から見ても容易なことではない。

 

 

これまで何を言ってきたのか、何をしてきたのかを棚上げにして未来だけを語る人物も多い中、氏がそれをきちんと懺悔という形で身を清められてから行っていることにも敬意の意を払いたくなった。

 

 

依然苦境から脱し切れていないこの国日本再生のためにも税制改革、地方分権、環境立国などのキーワードを散りばめながら提言がなされている。

 

 

外に出てみる。

 

 

空を見上げてみる。

 

 

PM2.5の影響か、もやがかかっているようにも幾分黄ばんでいるようにも見える。

 

 

空は世界で共有していることを思い出す。

 

 

空気は地球全体で共有していることを思い出す。

 

 

我々の住む社会のシステムも人類全体で共有していることを思い出す。

 

 

資本主義が完全に崩壊してしまう前に我々は世界全体でそれに代わるものを見つけていかなければならない。

 

 

日本人が寄与できることは決して少なくない。

 

 

不識塾 課題図書 -不識塾が選んだ「資本主義以後」を生きるための教養書-