胎内めぐり

「何、このプチアトラクション感覚は?」



「世界遺産でこんな楽しいアトラクションなんて期待してないんですけど。ん~ お化け屋敷よりも怖いかも。」



後ろにいた大学生らしきグループの一人が口にしていた言葉が妙に的を得ていて思わずニンマリ。



京都にある世界文化遺産の一つ清水寺での出来事。



清水寺にはこれまで何度か訪れたことはあったものの「胎内めぐり」は初めての体験だった。









清水寺の本堂手前にある随求堂(ずいぐどう)にて一人百円で体験できるアトラクション(?)である。



入る前はたかをくくっていた。



暗闇と言っても、少しくらいは明かりが入るのではないかと。



それが間違いだとわかったのは数珠を模した手摺を辿って中に入った瞬間だった。



「完全な闇」に戸惑い、動物としての本能が恐怖心を喚起する。一瞬一瞬を繰り返し、少しずつ落ち着きを取り戻していく。普段どれほど視力に多くを頼っているかがわかる。その視力が塞がれると本能は自動的に主力を触覚に切り換えた。



数珠の手摺を頼りに暗闇の中を数センチずつ摺り足で進んで行く。



右へ曲がり、左に曲がる。



少しずつ慣れてくるものの暗闇がどれ程続くのかわからない。それがまた新たな恐怖心を手繰り寄せる。



すると、前を行く人達の歓声が耳に届いた。



「あったよ!」



そこにはほんのり灯った明かりの下古代サンスクリット文字が刻まれた石があった。入口で言われた通り一つだけ願い事をして大きく丸い石をおもむろに回す。



その場を離れ再び暗闇に戻ろうとした矢先光が差し込んで来た。



希望の光だ。



未来への希望に包まれる。



そこで冒頭の台詞が聞こえてきたというわけ。



入口でもらった説明書きに目を通す。







これからも自分の中の光を探し続けよう。