ドーナツの穴はドーナツの一部なんでしょうか?
梅子に問いただされてしどろもどろになった松岡が苦し紛れに放った質問だ。
梅子は当然の如く答える。
穴は穴ですよね。
松岡は反論する。
ドーナツをドーナツたらしめているのはこの穴であって、この穴がなければただの油で揚げたパン。ということはこの穴もドーナツの一部と言ってもいいんではないでしょうか? それは竹輪も同じであって・・・
そんなわけのわからない議論を始めた松岡に梅子はそっと近寄り、抱き締める。驚いた松岡だが竹輪を形作っていた両手を解いて梅子を抱き締め返す。
素敵なシーンになった。
と言っても、話題にしたいのはラブシーンではなく、恋心の成就でもなく、「ドーナツの穴」である。
松岡の言っていた「ドーナツの穴」は確かにドーナツの一部と言うべきなのではないかという気がした。
以前に書いたブログを思い出したから。
「間抜け」 http://d.hatena.ne.jp/norio373/20120316
松岡は二枚目だけれど「間抜け」なところがあって、それは梅子も同じで、でもだからこそ人間ぽくて、お互い惹かれ合ったのかもしれない。
最後のシーンでは病院の廊下ですれ違いざまに梅子が松岡にドーナツの入った袋を手渡す。
無言で受け取り去っていく松岡の背中を幸せそうに見つめている梅子。
言葉がなくても、二人の愛があることが十二分に感じられた。
まるで「ドーナツの穴」みたいだ。