雲主と小作人

しばらく前にTwitter茂木健一郎氏がつぶやいていた言葉が喉にささった魚の小骨のようにずっと気にかかっている。



「リュックは、フェイスブックをやらない。雲主(cloud owner)がお前の情報を集めて、お金儲けに使うだけだからと。歴史は繰り返す。かつての封建領主と領民と同じ構造がネット上に生まれつつある。」



我々は小作人に過ぎず、搾取されていることにすら気づいていない。その事実にハッとさせられた。



改めて考えてみたい。



中世の、いや近代に至るまで小作人が領主に搾取され続けてきたことは歴史的事実である。その構図が今インターネット上で再現されつつあるという主張は正当なものなのだろうか。それは全く同じ構図と言えるのだろうか。構図は同じでも本質が異なるということはないのだろうか。



読み解くカギは小作人の意識にある。



現代の小作人と言えるユーザーが搾取されているという意識を持っていれば、本質的なものは変わらない。



そうではなく、ユーザーが雲主を利用し、利益(金銭的なもの以外を含む)を得ているのであれば、それは似て非なる構図ということになる。



そして、もう一つ重要なポイントはユーザーに選択の自由があるかどうか。理論的なものでなく、実際的な選択の自由がある状況なのであれば、それは搾取というよりは相互依存的な関係と言えるであろう。



全世界で10億人に達しようとしているFACEBOOKのユーザーたちは果たして小作人なのか?
iPod, iPhone, iPadを武器に顧客を取り込んできたAppleのファンたちは?
世界を席巻した最強の検索エンジンと無数の無料ツールや仕掛けを提供し続けるGoogleのユーザーたちは?



囲い込みの舞台が全世界に広がった競争は加速度的にスピードを上げ、重層的に広がり続けている。



いつの日か、



雲が破れ、その上で天国を満喫していたはずの人たちが地獄に堕ちていくようなことがないことを真摯に祈るばかりである。