分数の割り算


  
 分数の割り算がすんなりできた子はその後の人生もすんなり行くらしい。
 
 
 
ジブリの巨匠、高畑勲監督の「おもひでぽろぽろ」からの台詞である。
 
 
 
主人公のタエ子が小学校5年生の自分を思い出してトシオに語るシーンより。
 
 
 
「分子と分母をひっくり返してかけるって教わった通りできた?」
 
 
 
「覚えてないのはすんなりできたからよ、きっと。」
 
 
 
「りえちゃんというおっとりした子は算数得意じゃないのに素直に分母と分子をひっくり返して百点!」
 
 
 
「その子はずぅっと素直にすくすく育って、今はもうお母さん。2人の子持ち。」
 
 
 
分数の割り算のテストが散々だったタエ子に姉が動転し、必死になって教え込もうとする回想シーンではこんな会話が繰り広げられる。
 
 
 
あまりの姉の勢いにタエ子が待ったをかけるようにこう尋ねる。
 
 
 
「分数を分数で割るってどういうこと?」
 
 
 
「3分の2個のリンゴを4分の1で割るっていうのは、3分の2個を4人で分けると1人何個かってことでしょ?」
 
 
 
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「6分の1個!」
 
 
 
タエ子の答えにお姉さんは一瞬考えて、すぐに切り返す。
 
 
 
「それは掛け算!」
 
 
 
「とにかく、リンゴにこだわるからわからないのよ。掛け算はそのまま、割り算はひっくり返すって覚えればいいの!」
 
 
 
困った時によくある返答。
 
 
 
現実的な対応という観点からは、タエ子のお姉さんがが言うように余計なことを考えず、ある法則を覚えてそれを適用することだけに集中すればよいのかもしれない。その方がタエ子が言うりえちゃんのようにスクスク育つだろうし、幸せにだってなれるかもしれない。
 
 
 
それでもタエ子を支持したくなるのは筆者だけではないはず。
 
 
 
たとえ母や姉に心配されようが、20代後半になっても先が見えにくかろうが、身の回りで起こることに疑問を持ち、自分の頭で考える生き方の方が価値があるように思えてならない。
 
 

誰かに教わった法則を何も考えずに適用して、正しい答えを出すだけの人生は周りからは正しく、幸せに見えるかもしれないけれど、本当の自分が不在になる恐れがあるから。


それに、


人生はそんなに簡単に割り切れるものでもないから。



分数の割り算についてもう少し真剣に考える時間を設けてもいいかもしれない・・・