7年後の夏を期待して

今朝、午前5時過ぎに世界的なニュースが流れた。



2020年東京五輪決定! 56年ぶり2回目開催



2020年五輪、東京開催が決まり、笑顔を見せる安倍首相ら、2020年夏季五輪の開催都市を決める国際オリンピック委員会(IOC)の第125次総会が7日(現地時間)、アルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれ、東京での開催が決まった。日本で夏季五輪が行われるのは1964年以来56年ぶり2回目。冬季五輪の72年札幌、98年長野を含めると、22年ぶり4回目の日本開催となる。前回の16年五輪で落選した東京は2度目の挑戦で開催権を勝ち取った。

IOC委員による投票では、立候補した3都市のいずれも過半数を獲得することができず、1回での決定とはならなかった。イスタンブール(トルコ)とマドリード(スペイン)が同票で並んだため再投票が行われ、最少得票数のマドリードが落選。その後、東京とイスタンブールの決選投票が行われ、東京が開催都市に選ばれた。東京は60票、イスタンブールは36票だった。



最終プレゼンが勝因=IOC委員の評価―2020年五輪招致


時事通信 9月8日 12時10分配信
 東京が開催を決めた20年夏季五輪招致で、国際オリンピック委員会(IOC)委員の多くが東京の最終プレゼンを勝因の一つに挙げた。懸念された東京電力福島第1原発の汚染水漏れ問題に対する安倍晋三首相の明確な説明も評価された。
 最終プレゼンでの質疑応答で汚染水問題について質問したハイベルク委員(ノルウェー)は「風評が耳に入っており、誰かが聞かなくてはならなかった。首相は問題をきちんと理解し、答えは的確で、危険がないことが伝わった」と話した。
 コーツ理事(オーストラリア)も汚染水問題に対する説明に納得し、「マドリードは経済危機、イスタンブールには政情不安がある。IOCは安心して開催できる都市を選んだ」と分析した。
 パウンド委員(カナダ)は「東京が1回目の投票で勝つとさえ思っていたから驚きはないが、(60票を取った2回目の)大差にはびっくりした」と言う。また、失敗した16年五輪招致と比較し、「厳しい質問にも明確な英語で返していたし、あれほど感情に訴えた日本のプレゼンを見るのは初めてだった。勝利に値する」と、前回からの成長ぶりをたたえた。
 次期会長選の有力候補になっているバッハ副会長(ドイツ)は「東京は開催の提案を実現できることをきちんと示した」と評価した。 



小学生は「宿題は明日やる」と言うが、安倍首相は「そもそも宿題はありません」と言ったのだ。
猪瀬直樹東京都知事は、東京五輪開催が決定した後のインタビューで「これで希望を作ることができる」と紅潮した顔で答えた。招致におけるメインスローガンは、「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ」だった。
必要とされていた夢がこうして手に入り、これで希望が作れるのだと言う。あまりにも浮ついてはいないか。投票直前の安倍首相のスピーチも含めた上で皮肉めいた言い方をすれば、欲しかった希望は、「国民の希望」ではなく「原発に対する希望的観測」だったのではないか。

投票が始まる直前に新聞受けに差し込まれた朝刊を引っこ抜いて、日本に五輪を行なう資格などないのではと根から疑った。進む投票を横目で見つつ、IOC総会での最後のプレゼン&質疑応答で放たれた安倍首相の発言要旨にうなだれた。
福島第一原発での汚染水漏れに対して、「状況はコントロールされている。決して東京にダメージを与えるようなことを許したりはしない」(9月8日・朝日新聞朝刊)とした。4日の会見で招致委員会の竹田恒和理事長が「東京は水、食物、空気についても非常に安全なレベル」「福島とは250キロ離れている」(9月7日・東京新聞朝刊)と、「中央が良ければ」という信じ難い考えを漏らしたが、7年後の大きなパーティの準備に明け暮れるあまり、目の前に山積した課題を放ってしまった。宿題をサボって遊びに行く小学生でもあってもそれなりに宿題のことをプレッシャーにしながら遊んでいるはずだが、この方々には、そういった後ろめたさがない。小学生は「宿題は明日やる」と言うが、この人たちは「そもそも宿題はありません」と言ったのだ。子どもじみている、と書いたら、子どもに失礼だ。

失われた希望を元に戻さずに、新しく希望を作ろうという。非道ではないか。
国際原子力事象評価尺度(INES)の暫定評価を、「レベル1(逸脱)」から「レベル3(重大な異常事象)」に引き上げられた経緯のなかで、今現在の汚染水漏れを「状況はコントロールされている」と断言してしまう異様さをIOCの委員たちが最終的に察知できなかったのは残念だが、そもそもIOCは国際機関ではないし収入源の安定を最優先する組織だから、この汚染漏れの実態がどこまで最終的な判断基準として問われたかは分からない。
それにしても、目の前にある重大な事実を、「夢」「希望」という(現時点では)空疎なメッセージで覆い被せようとする働きかけに飲み込まれてはいけない。たったの2年半前に、経済優先のために進めてきた国策によって、個人がすさまじく軽視されたことを実感したばかりではないか。東京五輪が開催されれば数十万人が海外から日本にやってくる。それによる経済効果も期待される、財界の期待も膨らむ。その数十万人の一方で、福島県民は今でも約15万人が避難をしている。失われた希望を元に戻さずに、新しく希望を作ろうという。これって本当に、非道ではないか。物事には、順番がある。その順番を完全に誤っている。

「直ちに人体や健康に影響はない」と「健康問題は今までも現在も将来も、まったく問題ない」
「汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている」「健康問題は今までも現在も将来も、まったく問題ない」、この安倍首相の発言は極めて重い。安倍首相がこの場で「完全に」「まったく」と断定したことを絶対に覚えておくべきだし、とりわけ健康問題について「将来も」まったく問題ない、としたことについて、その論拠の明示を求めなければならない。
原発事故発生直後、当時の官房長官であった枝野幸男は「直ちに人体や健康に影響はない」と繰り返した。「じゃあ将来は?」という問いには答えが用意できなかったのだ。今回、安倍首相は「健康問題は将来も、まったく問題ない」と言い切った。そう言い切れる理由はどこにあるのか。直ちに明示をすべきだ。
「健康問題は今までも現在も将来も、まったく問題ない」とした後に、安倍首相はこう続けている。「完全に問題のないものにするために、抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、すでに着手している」。現在着手しているプログラムは、「完全に問題のないものにするため」のもの。となれば、その前に発言した、「まったく問題ない」は早々に崩れる。ヘッドラインだけではなく事実を見てほしいと安倍首相は言うが、そちらのお粗末なヘッドラインを正すのが先ではないのか。

経済と夢と希望が巨大なスピーカーで連呼されたとき、悲痛で切実な声は届かなくなる。
いざ開催が決定すると、五輪と福島を絡めて冷静に発言することに、「こうして皆が喜んでいる時になんで水をさすのか」という雰囲気が立ちこめるのだろう。そして、(だからこそ)「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ」というスロガーンが巧妙に声高に動き出す。これで経済が活性化される、という言葉は、かつて地方に原発を量産したときに放たれた、これで地域が潤うんだからいいじゃないですかと、同義だ。あの時は起きるかもしれない事故に目を向けさせないようにしたわけだが、今回は起きてしまった事故に目を向けさせないようにしてみせたわけだ。こうして、経済と夢と希望が巨大なスピーカーで連呼されたとき、悲痛で切実な声は届かなくなる。
もう一度繰り返す。小学生は「宿題は明日やる」と言うが、この人たちは「宿題はありません」と言ったのだ。7年後の五輪開催は確かにめでたいが、まずは、その希望のために大きな宿題を揉み消そうとする非道に厳しい目を向けなければいけない。

武田 砂鉄
フリーライター

フリーライター。「CINRA.NET」にて、「フジワラノリ化論」 「コンプレックス文化論」を連載。雑誌「beatleg」「STRANGE DAYS」「TRASH UP!!」などでも執筆中。 ここでは、時事・芸能を中心に、見過ごしがちな違和感をわざわざ 書き留める。以上



「やっかみ」に過ぎないのだろうけれど、個人的には2回目になる東京オリンピックを望んではなかった。



個人的にはイスタンブールが選ばれるのではないかと思っていた。



とは言っても、



日本での開催に否定的だったわけではない。



単純に東京での開催に懐疑的だっただけ。



東京一極集中が引き起こしている問題は地方在住の者しかわからない。



税金をつぎ込んで、一極集中で金も力もある東京に更に威厳と大義名分と権力をつけさせる必要はないと感じていた。



とは言え、



決まったことにはとやかく言うべきでもないし、言うつもりもない。



7年後の夏、



世界から集まる人と金、注目をこの国の復興に活かせるよう頑張っていけばよい。



そう感じるのみだ。



7年後の夏を今から期待している。



最後に、



尊敬する人の言葉をそのまま掲載したい。
7年後のためにも。もっともっと先の未来のいつかからこの日を振り返った時のためにも。


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東京への決定、おめでとうございます。!!!

招致合戦の終盤戦で逆風が強くなってくる感があったことから、正直
今回もダメではないかと不安が増していましたが、見事に払拭してくれました。
招致チーム日本の勝利でしょう。


・・・中略



終盤での全国的な盛り上がりや決定後の国民の一体感を見ていると、これから2020
年に向けて
この国は直面する様々な困難を上手に切り抜けていくのではないかとの期待を抱か
せてくれました。
7年という期間は、短すぎも長すぎもなく、国として目標を持つには程よい時間だと
思います。

私も、1964年当時の、日本国民としての連帯感と高揚感を再び感じています。

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