ワニの左目

「ワニの左目のことは考えないで下さい。」



「右目のことを考えてしまうのは仕方ないとしても、左目のことだけは絶対考えないで下さい。」



アレクサンドロス大王が未来を確実に言い当てる女がいると耳にし、宮廷に呼び寄せ、その術を教えて欲しいと頼んだ。



すると、女は王に大きな焚き火をして、そこから出てくる煙を読んで下さい、と言いました。



但し、煙を見つめている間、ワニの左目のことだけは考えてはいけません、という冒頭の言葉が発せられる。



結局、アレクサンドロス大王は未来を予見することを諦めてしまう。



皆さんは如何でしたか?



ワニの左目のことを考えずに済んだでしょうか?



人間というものは、何かのことを考えまいとすればするほど、そのことばかり考えてしまう生き物です。



ワニの左目のことを考えてはいけないと言われた瞬間からワニが頭に浮かび、右目? 左目? 段々と頭の中のワニの姿がリアルになり、いずれ左目にたどり着いてしまう。



そうではなかったでしょうか?



人間が持って生まれた好奇心のせいなのか、してはいけないと言われるとしたくなる欲望のせいなのか、人種や年齢を問わず、人間誰しもこの特性を持っているように思います。



どうすればこの特性を役に立てられるのでしょう?



この特性を日々の生活の改善やより良い社会を作るため、人類の発展に役立てられる方法は?



どうかそのことだけは考えないで下さい。



絶対に考えないで下さいね。