世界の均衡

 
 
この世界の森羅万象は全て均衡の上に成り立っている。風や海も大地や光の力も獣や緑の草木も全ては均衡を崩さぬ範囲で正しく動いている。しかし、人間には人間ですら支配する力がある。だからこそ、わしらはどうしたら力が均衡を保てるかよくよく学ばなければならない。全てのものには真の名がある。その真の名を知ることによって相手を支配できるのが魔法の力だ。使い方を誤れば世界の均衡を簡単に壊してしまう。無闇に使ってよいものではない。
 
 
ゲド戦記ハイタカのことばである。
 
 
「そろそろ一休みするか。・・・土の香りはいいもんだな。」
 
 
「あなたは魔法使いですよね。」アレンが尋ねる。
 
 
「そうだ。・・・その魔法使いがなんで農夫の真似事などしているかって聞きたいのか。」
 
 
その質問への答えである。

 

映画の後半では世界の均衡は既に人間によって壊され、今更何を気にする必要があるのかとハイタカに疑問が投げ掛けられる。


それはそのまま我々への問いのように感じられた。


果たして、世界の均衡は既に壊れてしまったのだろうか。


世界的な異常気象や至る所で頻発する巨大地震、人間による乱開発により分単位で絶滅していく動植物たち・・・


世界の均衡は破れつつあるのかもしれないけれど、


まだ壊れてはいない。


少なくとも今のところは。


だからこそ我々は必死になって日々を生きている。


そう信じたいし、


それを今の答えとしたい。


自分にできることは何だろう。