不識塾 課題図書 -「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱-

 

 

「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱

「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱

 

 

ワンピースも読んでいないし、ガンダムにも嵌ったわけではないけれど、この本を買うことになったのは今年の月一課題「不識塾 課題図書」の一冊に挙げられていたから。

 

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上記「課題図書」のタイトルと比べると毛並みの違う一冊という印象があって当初は選ぶつもりはなかったけれど、ふとしたきっかけで概要を知り、俄然興味を持った。

 

昔から「ジェネレーションギャップ」や「世代間の常識の違い」は指摘されていた。この一冊もその範疇から出るとは言い難いけれど興味を引かれたのはそれぞれの世代の特徴が端的に、かつ面白い例とともに挙げられていたこと、実感として持っていた感覚とぴったり合っていたから。

 

ボストンコンサルティンググループの経営戦略コンサルタントである作者の定義はこう綴っている。

 

 「起動戦士ガンダム」に影響を受けた世代は、組織は理不尽なものと理解しつつも、そこに所属することをよしとしている。一方で、「One Piece」に影響を受けた若い世代は、組織への所属よりも仲間への所属をよしとしている。(P23)

 

ここでいう「組織」とは企業であり、社会そのものを指す。「タテ社会」と言われ続けてきた日本の社会の中で「ガンダム世代」は戦後の価値観を引きずっている最後の世代。

 

それに対してワンピース世代は ヨコ社会に住み始めている「新人類」。タテ社会の常識やルールよりも自由や仲間を優先する価値観が特徴的。

 

その全く異なる価値観を持った人たちが同じ場所(企業、組織)で働くことで起こる摩擦を「ワンピース世代」の反乱、「ガンダム世代」の憂鬱と名づけ、分析している。

 

もちろん作者も一つの漫画やアニメが全ての人間や一つの時代を表すことは暴論であり、極論であることは十二分に認識しており冒頭でそう語り、それでも仮説として展開するだけの価値ある内容であると述べている。

 

個人的な印象としては、「ガンダム世代」や「ワンピース世代」という目を引く言葉を使ってこれからの日本で間違いなく起こることになる「世代間闘争」を喚起し、それが結果として日本社会をよい方向に向かわせるためのこと、と勝手に受け取っている。

 

モノが溢れ、欲しいモノがなくなっていくとヒトは次第に他のモノを求めるようになる。

 

それが形のないコト(サービスや経験)であったり、自由や愛といったガイネンとなる。

 

急激に進むIT化、ネット社会化によってその価値観はあっという間に広がり、人々の心を侵食していく。

 

ワンピース世代が価値を置いているものは時代の産物であり、ガンダム世代が抗えるような規模のものでは既になくなっている。だからこそガンダム世代は自分たちが変わらなければならないことを知っており、だからこそ憂鬱なのだ。

 

と同時に、ガンダム世代が前の時代から受け継いできたモノ、コト(価値観を含めて)が物理的にも通用しなくなってきていることにも注目しなければならない。それは公的年金問題であり、戦後急ピッチで作られた社会インフラの老朽化問題であり、危機的な国家財政問題である。(作者は「おわりに」で「日本ん政府はすでに経済的に破綻している」と書いている)

 

誰かが背負わなければならない負の遺産ガンダム世代までは背負わされ、それを止むを得ないと感じてきたにも拘わらず、次の世代であるワンピース世代は迷いもなく拒否する可能性が高まっているから。

 

世代間闘争はより熾烈になっていくに違いない 

 

これは経営学者である故ピーター・F・ドラッカー氏の言葉がますます現実味を帯びていく・・・