宮崎あおいは怪物だ。
大女優を怪物扱いするのはどうかと思うものの、NHKテレビ連続ドラマ小説「あさが来た」の主人公あさの姉、はつ役を演じる姿を観てそう感じてしまった。
主役ではない(準主役ではあるが)にもかかわらず、彼女のシーンになると目が釘付けになってしまう。空気感が変わるというか、世界が一瞬で変わるというか、他の女優にはない何かを彼女が持っていることは間違いない。
その存在感と言おうか、透明感と言おうか、役になりきっていると言おうか、誰かが演技をしている感じが一切なく、あまりにも自然すぎて、あまりにも普通すぎて、宮崎あおいという人物が完全に消えている。
それが演技をするために生まれてきたという大女優の証なのだろうけれど、あたかも「消身」してしまうような、或いは「変身」してしまうような、そんな不思議な感覚を覚えてしまったがための素直な感想。感嘆、驚嘆、賞賛、尊敬・・・と受け取ってもらいたい。
改めて考えると、
別人(その役)になり切る
それは、
自分をなくすこと。
消すこと。
それが俳優の仕事であり、演技の秘訣。
それは何も俳優だけの特権ではなく、日常生活の中で我々自身も試せるのではないか。
矛盾する想いのどちらが本当の想いと悩むよりも、
相反する感情をどう整理するかと苦しむよりも、
そう在りたい自分になってみてはどうだろう。
ぐずぐず悩む自分を消して、
理想の自分を演じてみてはどうだろう。
理想の上司(部下)に、理想の父(母)になり切ってみてはどうか。
我々も俳優になればよい。
怪物になればいい。