「三びきのやぎのがらがらどん」という絵本がある。
絵本作家マーシャ・ブラウンの1957年の作で世界中で人気のある傑作だ。
- 作者: マーシャ・ブラウン,せたていじ
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1965/07/01
- メディア: 大型本
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それほど長い話ではないので全文載せさせていただこう。
むかし、三びきの やぎが いました。なまえは、どれもがらがらどん と いいました。あるとき、やまの くさばで ふとろうと、やまへのぼっていきましたのぼる とちゅうの たにがわに はしが あって、そこを わたらなければなりません。はしの したには、きみのわるい おおきな トロルが すんでいました。ぐりぐりめだまは さらのよう、つきでた はなはひかきぼうのようでしたさて はじめに、いちばん ちいさいやぎのがらがらどんが はしを わたりに やってきましたかた こと かた こと と、 はしが なりました。「だれだ、おれの はしを かたことさせるのは」と、トロルが どなりました。「なに、ぼくですよ。いちばん ちびやぎのがらがらどんです。やまへ ふとりに いくところです」と、その やぎは とても ちいさい こえで いいました。「ようし、きさまを ひとのみにしてやろう」と、トロルが いいました。「ああ どうか たべないでください。ぼくは こんなにちいさいんだもの」と、やぎは いいました。「すこし まてば、二ばんめやぎの がらがらどんが やってきます。ぼくより ずっとおおきいですよ」「そんなら とっとと いってしまえ」と、トロルは いいました。しばらくして、二ばんめやぎの がらがらどんがはしを わたりに やってきました。がた ごと がた ごと と、はしが なりました。「だれだ、おれの はしを がたごとさせるのは」と、トロルがどなりました。「ぼくは、二ばんめのやぎの がらがらどん。やまへふとりにいくところだ」と、その やぎは、いいました。まえの やぎほど ちいさいこえではありません。「ようし、きさまを ひとのみにしてやるぞ」と、トロルがいいました。「おっと たべないでおくれよ。すこし まてば、おおきいやぎの がらがらどんが やってくる。ぼくより ずっと おおきいよ」「そうか、そんなら とっとと きえうせろ」と、トロルがいいました。ところが そのとき、もう やってきたのがおおきいやぎの がらがらどん。がたん、ごとん、がたん、ごとん、がたん、ごとん、がたん、ごとん と、はしがなりました。あんまり やぎが おもいので、はしが きしんだり うなったりしたのです。「いったいぜんたい なにものだ、おれのはしをがたぴしさせる やつは」と、トロルが どなりました。「おれだ! おおきいやぎの がらがらどんだ!」と、やぎは いいました。それはひどく しゃがれた がらがらごえでした。「ようし、それでは ひとのみにしてくれるぞ!」と、トロルが どなりました。「さあこい! こっちにゃ 二ほんの やりが ある。これで めだまは でんがくざし。おまけに、おおきないしも 二つ ある。にくも ほねも こなごなにふみくだくぞ!」こう、おおきいやぎが いいました。そして、トロルに とびかかると、つのでめだまを くしざしに、ひづめで にくもほねも こっぱみじんにして、トロルをたにがわへ つきおとしました。それから やまへ のぼっていきました。やぎたちは とても ふとって、うちへ あるいてかえるのもやっとのこと。もしも あぶらが ぬけてなければ、まだふとっているはずですよ。そこでーチョキン、パチン、ストン。はなしは おしまい。
瀬田 貞二による訳が見事だ。
"Three Billy Goats gruff"という原題の"gruff"はしわがれ声と普通は訳す。それを「がらがらどん」とすることで日本語としての作品に魂が込められた。
肝心の「絵」をここで見せられないのは残念だけれど、幼児向けの絵本とは思えないほど荒削りで大胆なイラストは怖ささえ感じられるほど。
小さな子どもには怖すぎるのでは?
と思いつつもうちの子どもたちはいつも釘付けで何度も何度も読んでくれとせがまれた一冊。
その最後が謎だったけれど、今回こうして読み直してみて、物語を自分で打ってみてハッとした。
山へ太りに行ったやぎたちが戻ってきて、
「あぶらがぬけていなければ」
を、まだ太っていれば、と読むと、
チョキン、パチン、ストン
という擬音語は、
やぎたちが解体される音に他ならない。
ということは・・・
あくまで一つの解釈に過ぎないけれど、これもまた「賛否両論ある絵本」に数えられる一冊なのかもしれない・・・
いつの日かまた子どもたち(孫?)に読み聞かせができる日が今から待ち遠しい。(となりのトトロのエンディングでサツキとメイがお母さんに絵本を読んでもらっていたように・・・<三匹の山羊>)