聞き耳を立てる

 

「聞き耳を立てる」という表現がある。

 

耳を澄ませ、いつもより多くの音をキャッチし、解析し、背後にあるものを炙り出す。

 

普段は聞こえない音が耳に届き、いつも聞こえている音も異なる音色に聞こえたり、気づかなかったハーモニーが感じ取れたりする。

 

そう考えると、聞くだけではなく、見るものも食べるものも触るものもすべて同じと言えないだろうか。

 

特に注意を払わずとも聞こえてくる音は大きな音や特徴のある音、或いは不協和音。

 

否応無く耳に残る音しか拾わないと鈍感になってしまう。聴覚が退化してしまう。

 

虫の鳴き声や風の吹く音、雪が積もっていく音、誰かの囁く声、大勢に掻き消されてしまう小さく、でも大切な音が聞こえなくなってしまうのではないか。

 

時には立ち止まってゆっくり息を吐き、新鮮な空気で肺を満たしてみる。

 

目を閉じて、耳を澄ませてみる。

 

何が聞こえてくるだろう。

 

普段の当たり前の世界が真新しい世界に感じられるかもしれない。