パンゲアの扉

 

皆様、新年明けましておめでとうございます。 

 

2018年という年は未来のある時から振り返ると、大きな変化の年、その起点となる年だっと位置付けられるのではないだろうか。

 

そんな風に感じることが多くなって来たところに今日の日本経済新聞の記事がビシッと嵌った。

 

(1)溶けゆく境界 もう戻れない
デジタルの翼、個を放つ 混迷の先描けるか
パンゲアの扉 つながる世界
2018/1/1 2:30 朝刊 
一握りの大国や大企業だけが力を振るってきたグローバリゼーションが変わる。小さな国、小さな企業、そして個人。デジタルの翼に解き放たれ、境界を溶かしてゆく。つながる世界への扉が開いた。もう誰も後には戻れない。

(関連記事をパンゲアの扉特集面に)


スイスの都市ツーク。庁舎の入り口にはビットコインでの納税を受け付ける表示も=小園雅之撮影
仮想国民2.7万人
移民への反感が渦巻く欧州に「デジタル移民」を募る国がある。人口130万のエストニア。国外に住む人に自国民に準じた行政サービスを提供する電子居住者制度で、143カ国、2万7000人の仮想国民がいる。

トルコのイスタンブールで旅行業を営むアルズ・アルトゥナイさん(44)は2017年3月になった。「簡単に会社をつくれて欧州全域で営業できる免許をとれた」と喜ぶ。

テロ頻発による旅客需要の落ち込みで経営が15年ごろから急速に傾いた。打開策を探していたところ見つけたのがエストニアの制度だった。

申請はインターネットで済む。名前や住所を入力し、旅券の写しをアップロード。手数料101.99ユーロ(約1万3700円)はクレジットカードで払う。1カ月ほどで届く公的個人認証機能を備えたICチップ入りカードが“国民"の証しだ。


カードがあれば銀行口座を開き、会社もつくれる。エストニア欧州連合(EU)加盟国。5億人の市場で事業を展開する足場が手に入る。
電子居住者の会社はいま4300。小国エストニアはデジタル空間の活用で投資を呼び込んで経済を活性化し、新たな成長の起点に据える。

グローバリゼーションの起源と位置付けられる大航海時代から約500年がたつ。腕力で植民地を求めた国家が主役の時代、市場と労働力を海外に求めた企業が主導する時代を経て21世紀。無数の個が新たな世界を拓(ひら)き始めた。

スイス北部のツークはデジタル時代の金融の都だ。「我々はビットコインの味方」。ドルフィ・ミュラー市長は野心的だ。国家が価値を保証していない仮想通貨を世界で初めて納税に使えるようにした。


スイスでかつて隆盛を誇ったのは世界中の富裕層から資産を預かるプライベートバンク資金洗浄規制の強化で社数は10年で3割強減った。金融業の競争力回復へIT(情報技術)との融合を進め、ツークは起業家による仮想通貨技術を使った資金調達(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)の世界的拠点に浮上。12万人の住人の国籍は130を超える。
「すぐに資金を集めたい」。スイス金融大手UBS元幹部でツークのICO関係者を束ねるオリバー・ブスマン氏のもとには毎日10社近くから問い合わせがある。魅力はスピードだ。ネットワーク上に示す事業計画書が評価されれば、世界の投資家から手早くお金を調達できる。

相場の乱高下が激しい仮想通貨を使う仕組みにはリスクがつきまとう。法規制が必要との指摘も強い。それでも跳躍台を求める起業家や利にさとい投資家が旧来の仕組みからなだれ込む。

イノベーショングローバル化の先導役だ。18世紀に英国で開発された蒸気機関。大量輸送を可能にして世界の距離を縮めた。20世紀半ばからは欧米の多国籍企業が進出先の途上国に先進国の技術や製品を運び込んだ。

主導役が交代
今や新興国や思いもよらぬ国から世界で通用する斬新な製品やサービスが飛び出す。サウジアラビア生まれのメッセージアプリ「サラハ」。アラビア語で率直の意味だ。自分のアドレスを交流サイト(SNS)に貼り付けておくと、差出人不明の短文を受け取れる。

「友達が自分のことをどう思っているのか本音を知りたい」とのニーズをつかんだ。昨年夏に登場するや米国やベトナムなどでダウンロード回数が首位になった。日本語版がないのに日本でも人気だ。

24億人が持つスマートフォンスマホ)のデータ通信量は、20年に10年の400倍になる勢いで膨らんでいる。デジタルの伝播(でんぱ)力で、民泊仲介のエアビーアンドビーといった新機軸のシェアエコノミーも瞬く間に世界に行き渡った。

強国や巨大企業が影響力を広げてきたグローバル化の底流が変わっている。米国などの保護主義排他主義には「持てる者」主導の限界が映る。

代わって浮かぶのはグローバル化の大波に取り残されてきた「持たざる者」たち。デジタルが生み出す行動力と発信力で、既存の秩序や枠組みを塗り替えていく。

パンゲア」という一つにつながる世界への扉。その先にある混迷を乗り越え、新たな秩序を描けるか。昨日までとは違う新たなグローバリゼーションが見えてくる。

 

 ▼パンゲア ギリシャ語を起源とする「すべての陸地」の意味。現在の主要な大陸はかつて一つにつながっていたと20世紀初頭に提唱された学説にもとづく超大陸の名称。

 

パンゲアの扉が開かれた。

 

新しい大陸に向けて自ら走り出すのか、嫌々ながら誰かに押され、連れられていくのか、決めるのは自分だ。

 

超大陸で生き残っていく、成功を収めるためにも「個」を鍛えていかなければならない。

 

その手助けができればと。

 

新しい年、時代に向けての抱負としたい。

 

定点観測をしている日本経済新聞の社説は今年、こんな内容だった。果たして順風満帆で行けるのかどうかはわからないけれど、参考にできるものもあるはず。

 

順風の年こそ難題を片付けよう
2018/1/1 2:30 朝刊 
新年を迎え、目標に向けて決意を新たにした方も多いだろう。2018年をどんな年にしたら良いのか。政府と企業の課題を考えてみよう。

「世界経済は2010年以来なかったような、予想を大きく上回る拡大を続けている」。米ゴールドマン・サックスは18年の世界経済の実質成長率が17年の3.7%から4.0%に高まるとみている。地政学リスクなどあるが、久しぶりの順風である。

財政・社会保障の姿を
08年のリーマン・ショック以後、世界経済は停滞が続いた。米欧や中国で潜在成長率が下がり、貿易の伸びが低下する「スロー・トレード」も目立った。それが16年後半あたりからはっきりした回復をみせている。

先進国の大規模な金融緩和によって、株や不動産などの資産価格が上昇し、企業収益が拡大、投資につながる循環が動き出した。

日本の景気も7~9月まで7四半期連続のプラス成長を記録し、17年度は2%近い成長率を見込む声が多い。少子高齢化による人手不足が省力化投資を促している。上場企業は18年3月期に最高益を更新する見通しだ。

国内政治も波風の少ない年である。衆院選は終えたばかりで、参院選も19年夏までない。秋に自民党総裁選があるが、党内に安倍晋三首相の座を脅かす有力な対抗馬はいない。総裁3選ならば20年の東京五輪パラリンピックをまたぐ超長期政権が現実味を帯びる。

国際通貨基金IMF)のラガルド専務理事は「日が照る間に屋根の修理をしよう」と呼びかけている。J・F・ケネディの言葉を引用したもので、経済が順調な間に手間のかかる改革をやり遂げることの大事さを指摘する発言だ。「何かが政治的に難しいからといって避けて通れるわけではない」

18年は日本の「明治150年」にあたる。150年は前半が明治維新から太平洋戦争、後半が戦後復興からバブルを経て今に至るまで、と画然としている。来年に改元を迎えるこの時に、政府が最優先でやるべきことは何か。

高齢化社会を乗り切る社会保障と財政の見取り図をきちんと描くことにつきる。近代国家の建設や経済復興にも匹敵する難題だが、夏に政府が決める骨太方針で正面から取り組んでほしい。

団塊の世代が全員、後期高齢者になる25年以降、社会保障支出の膨張を抑えるのはどんどん難しくなる。今後20~30年は生産年齢人口は減るのに後期高齢者は増え続ける時代だ。健康寿命が延びているのに、従来の年齢区分で高齢者への社会保障給付を優遇する仕組みは時代遅れである。

65歳以上の労働力率も高まっている。就労機会をさらに確保して、年金の支給開始を段階的に70歳まで延ばすにはどうしたらいいか、総合対策を検討したらどうか。

19年には消費税率の10%への引き上げを控えているが、問題はその先だ。消費増税がデフレの再来や円高進行をもたらさないか注意しながら、「緩やかで継続的な税率上げ」を進める知恵がいる。

あわせて、財政との一体化が進む金融政策でも用心深い対応が必要だ。米欧が踏み出した異次元緩和の出口について、日銀の黒田東彦総裁はデフレ心理の払拭を最優先する姿勢を示している。

雇用改革も待ったなし
春の任期切れで黒田氏が続投しても新総裁が生まれても、課題は同じだ。経済がどうなったら、どの順番で金融政策を見直すのか。事前に市場に対してメッセージを送ることを忘れてはならない。

日本経済の活力は、政府の仕事だけで高まるものではない。企業にも大いに努力を求めたい。

積み上がった手元資金を新技術を生む投資に振り向け、従業員にも手厚く分配すべきである。

日本企業による画期的な製品やサービスが久しく出ていない。デジタル化の時代はアナログ時代と異なり、失敗を恐れず、会社の内外の人材を取り込み、迅速に動くことが欠かせない。

過去の日本経済の低迷を振り返ると、たこつぼともいえる年次・年功主義の限界が浮かび上がる。

高度成長期型の新卒一括採用をいつまで続けるのか。流動性の高い労働市場をつくれるかどうか。待機児童対策などと一体で進める女性就労の促進と合わせ、人事・労務改革も待ったなしだ。

19年は天皇陛下の退位と改元統一地方選挙参院選、20カ国・地域(G20)首脳会議の議長国など行事が目白押しである。その前に片付けられるかどうか。10年後の日本はそれで決まる。