全体最適へ

 

部分最適から全体最適へとシフトしていかなければならない。

 

そんな風に感じる今日この頃、

 

「漂流する社会費用」というタイトルの日本経済新聞のコラムにこんな記事が載った。

 

市販薬あるのに病院処方5000億円 医療費膨張の一因  2019/7/12 2:00
 

医療費抑制につながる市販薬の利用が広がらない。湿布や鼻炎薬など市販薬があるのに、利用者が病院に通って処方される医薬品の総額が5千億円を超すことが日本経済新聞の調べでわかった。処方薬は自己負担が原則3割と安いからだが、残りは税金や保険料で賄う。一律に保険を使う制度を改め、代えがきかない新薬に財源を振り向ける必要がある。

 

■病院での自己負担、市販の4分の1 

2016年度の医療費は42兆円で、うち薬の費用は10兆円。公定価格(薬価)が3349万円の白血病治療薬「キムリア」が5月に保険適用となり、今後も高価な薬が相次ぐ見通し。症状が軽い人がすすんで市販薬を利用すれば、その分保険を使う費用を抑えられる。 

もともとは医師の処方が必要だったが副作用の心配が少ないとして一般用で認めた市販薬を「スイッチOTC」と呼ぶ。これ以外にうがい薬や保湿剤など古くから市販薬と処方薬の両方があったものもある。

処方薬に頼る人が多いのは自己負担が軽いからだ。ある湿布薬を通販サイトで買うと598円(6月中旬)だが、病院で同量をもらうと3割負担は105円。アトピー性皮膚炎に使う薬を肌荒れを防ぐ保湿剤として使う人もいる。その薬は市販の4分の1以下の負担で手に入るため不必要な受診が相次いだ。

■トップは湿布薬

日経新聞厚生労働省が14年度から公表している診療報酬明細書(レセプト)データを活用。市販薬と同じ成分を含む医療用医薬品の処方額を調べたところ、最新の16年度は5469億円だった。金額が最大だったのは主に湿布薬に使われる成分の702億円。2位はアトピー性皮膚炎や肌荒れに使う保湿剤成分の591億円だった。鼻炎薬も上位だ。

集計方法を比較できる15年度からは5%減ったが、これは診療報酬改定で薬価が下がったことが一因。同じ薬価で比べると16年度は2%増えた計算となる。病院の処方量が増えたとみられ、市販薬への切り替えが進まない実態が浮かんできた。

米医薬品調査会社IQVIAによると、がん免疫薬「オプジーボ」の18年度の国内売上高(薬価ベース)は1014億円だった。仮に代替可能な処方薬を市販薬にすべて転換すれば、オプジーボ級の高額薬を5種類分カバーできることになる。

 

■鈍い承認ペース

市販薬の承認ペースも鈍い。日本OTC医薬品協会(東京・千代田)は海外を参考に120種類の成分を市販できるよう国に求めているが、現在は86種。17年の市販薬出荷額は約6500億円だった。普及を促すため、市販薬の購入費の一部を控除する税優遇が17年に始まったが、18年の利用者は2万6千人と当初見込みの100分の1にとどまる。

市販の可否を決める国の検討会メンバーは医師が過半を占める。調査会社の富士経済(東京・中央)で医療に詳しい小倉敏雄主任は「市販品が増えれば病院にくる人が減り、病院経営に響きかねない。あまり広めたくないのが医者の本音」と指摘する。病院に来てもらえば、検査や処置、処方などで幅広く診療報酬を得られるからだ。製薬会社などの国への市販化要望は18年度に3件と、16年度の18件から急減した。

 

■保険の一律適用は限界に

法政大の小黒一正教授は「すべての医薬品を一律で保険適用する仕組みを維持するのは難しい。使われ方に応じて自己負担を見直すべきだ」と訴える。

参考になるのはフランスだ。薬の重要性に応じて自己負担比率をゼロから100%まで5段階に分けている。抗がん剤など代えのきかない薬は全額を公費で賄い、市販品がある薬の自己負担を重くしている。国や自治体が必要性の薄い通院を繰り返す人に対して自制を促すような取り組みも求められる。

このままでは医療費の膨張にブレーキがかからない。深刻な病状の患者に医療費を手厚く振り向けるため、財源の配分を見直す時期にきている。

(上林由宇太、久保田昌幸)

 

 

病気の人、つらい症状のある人、病院関係者、製薬会社、健康な人、税金を払っている人、いない人・・・

 

様々なステークホールダー(利害関係者)の中で声の大きい人、力のある人だけを優遇するのは「部分適応(最適)」に過ぎない。

 

上記のケースなら「国民」を考え、「全体最適」を目指さなければならない。

 

自分の判断や現状が部分最適にしかなっていないか自ら確認しておきたい。