娘の髪をとく。
9歳になって間もない女の子の背中まで伸びた長い髪をとく。
筆者は男性で、これまで数十年生きてきて髪を長く伸ばしたことはなかったし、誰かの長い髪をとくという経験もしたことはなかった。(娘がもっと小さな頃は髪が短かった)
お風呂上がりの髪をドライヤーで乾かしながら丁寧に毛先までゆっくりとブラシを通していく。
それを何度も何度も繰り返す。
するとふと不思議な想いが舞い降りてくる。
自分の髪は乾かすのも整えるのも1分以内、せいぜい2分程しかかけないけれど、女性の長い髪は別物だという気がした。
髪は女の命
そんな表現は前時代からの遺物だと思っていたけれど、今も何ら変わらない。
多くの男性にとって髪を整えるのは、髭を剃ったり、爪を切ったりするのと何も変わらないけれど、女性が濡れた髪を乾かしたり、といたりするのは単なる作業ではなく、何かの儀式・・・
そう、
綺麗になるための儀式
そんな気がした。
そして、
日々繰り返される儀式を通して綺麗を作っていく。
綺麗でいることの価値観をより強固なものにしていく。
全く異なる人生の価値観を垣間見たような、
すぐ隣にいる人が同じものを同じように見ていたという認識が根底から崩れたような、
そんな気がした。