終焉の地から

あるキャリアカウンセラーから聞いた話。



アメリカの国立公園に勤務するガイドは単なるガイドではなく、いわゆる心理カウンセラーの資格を持っている人が多いという。



日常生活とは異なる壮大な景色を求めて来る観光客の中には、そこを自分の終焉の地と考えてくる人もいるらしく、トレーニングを受けたカウンセラーが見ればすぐにわかるという。



とは言っても、直接的に話しかけたり、見え透いたことをするわけではない。観光客の一人として普通に接しながらもその場所で最も美しいポイントを、最も美しくなる時間帯に、最もその人が喜ぶであろう食事ができるレストランへ誘う(いざなう)いう。



「また、来たい」



と思ってもらうために。



終焉の地になると思っていた場所が希望の生まれる場所になることもある。



我々にとってのグランドキャニオンは、案外、そう遠くない場所にあるのかもしれない。