心の家

長年連れ添った奥さんを亡くしたおじいさんがいた。



子どもたちは巣立ち、今は家族との思い出の詰まった家に一人静かに暮らしている。



そこへ大きな地震が起こった。



倒れてきた家具で足を怪我したおじいさんは動けなくなってしまう。



心配した息子がタイミングよく訪ねてきたものの彼の不注意で火事が起こることに。



家族との思い出の詰まった家がメラメラと燃えてゆく。



息子はお父さんを背負い、必死で逃げ出す。



燃えてゆく家を振り返りながら、おじいさんが叫んだ。



「こりゃ、ええわぁ!」



「え? 」



息子は負ぶった父親を思わず見上げる。本心から喜んでいるような笑顔に戸惑いつつ口を開く。



「ごめんな、お父さん。思い出の詰まった家だったのに・・・」



おじいさんが続ける。



「これで、何か新しいことが始められる!」



そして、



おじいさんは高らかに笑い始めた・・・



昨夜みた夢だ。



我々も知らず知らずのうちに思い出の詰まった家を心の中に建てているのかもしれない。



それが気づかぬうちに新しいことにチャレンジする足かせになっているということに気づかずに。



何かを失うことは悲しいことだけれど、新しい何かを得られるチャンスでもある。



そんな夢をみた。