鳥の目で世界を見たら
高階 杞一
地上から一メートル三十センチのぼく。
地上から二メートルの高さに立つと、三メートル三十センチのぼくになる。
地上から十メートルの高さに立つと、十一メートル三十センチのぼくになる。
巨きくなると、こんなにも世界が違って見えてくる。
目の下に広がる木々の海。
あの一番高い木はギンドロの木。濃い緑はシイやカシの木。
その上を鳥がゆっくりと飛んでいる。
ぼくより下を飛んでいる。
あんなところで鳥は、何をしているのだろう。
森の中にはどんな生き物がいるんだろう。
鳥も気も昆虫も
みんなひとつにつながっている。
この大きな緑の中で、人間も、みんなといっしょにつながっている。
鳥の目で世界を見たら、それがはっきりとわかる。
こんなに高くのぼってきたけれど、まだまだ空には手が届かない。
空は広い。空の向こうはもっと広い。
いくら手を伸ばしても届かないけれど、こころを伸ばせば見えてくる。
今まで見えなかったものが、きっと
いっぱい見えてくる。
大阪の万博記念公園にあるソラード(空の道)という展望施設にある詩。
展望台の下にはこんな説明書きが添えられていた。
1970年「人類の進歩と調和」をテーマ開催された日本万国博覧会の終了後、その敷地を「緑に包まれた文化公園」にするという基本方針がまとめられ、この万国記念公園の整備が始まりました。260haの広大な敷地の中でも中心となるのがこの自然文化園です。万博開催時、パビリオンの林立していたこの場所に、生態的に自立した森を再生するという先駆的な試みがなされ、100haの敷地に約260種60万本の樹木が植栽されました。当初は苗木の目立つ、畑のようだったこの場所も、今では100種以上の野鳥が観察され、たくさんの昆虫や淡水魚が生息する森となりました。
この豊かに成長した森の表情を木と同じ高さまで登って立体的に観察すれば、きっと新たな森の魅力を発見できることでしょう。
その森はこんな風に成長している。
ぐるっと視界を回転させてみる。
鳥の目になって、森の中を、公園の中を飛び回ってみよう。
42年前に開かれた万博のテーマである「人類の進歩と調和」は少なくともこの地では実現しているように思える。
しかし、
鳥の目で現在の世界全体を見渡すと・・・
悲しい気分になるのは私だけではないかもしれない・・・