京とアトムが救うもの

昨日のブログの最後で「座して死を待つ訳にはいかない」という言葉を残した。
「ほんの始まり」 http://d.hatena.ne.jp/norio373/20120420



その思いを払拭してくれるかのように昨夜のワールドビジネスサテライト(日本テレビ)で日本中に散らばっている様々な「世界一」を紹介していた。



その中でもコンピュータ性能評価で2回連続世界一を獲得したスーパーコンピュータ「京」(ケイ)を扱った特集「世界一スパコン 未来が変わる」には心を奪われた。



神戸市ポートアイランドにある理化学研究所 計算科学研究機構にスーパーコンピュータがずらっと並んでいて、その光景はさながらハリウッド映画を思わせる。



京(ケイ)の能力は文字通り桁違いだ。一つの箱(ラック)がパソコン数百台程の能力を持ち、これが864台集まり全体で1秒間に1兆の1万倍、つまり1京回の計算ができる。



その「京」も実はまだ完成形ではなく、6月末に完成、秋からの本格稼働を予定しているという。



その高い計算能力を何に使うのか。どんなことができるのか。俄然疑問が浮かぶ。



理化学研究所の横川三津夫工学博士曰く、



「スーパーコンピュータを使うといろいろなもののシミュレーションができます。計算したものでいろいろな実験を仮想的に行うことができるのです。」



場面は、理化学研究所の隣にある神戸大学の施設に移る。ここには3次元の可視化装置で京の計算した大量のデータを可視化できる国内最大のシミュレーション用スクリーンがある。



映し出されるのは宇宙空間を進む小型探査衛星。特殊な眼鏡をかけると映像が立体的に見える。探査衛星は4台のイオンエンジンを持ち、噴き出し溝から水流のような廃棄物が放出され、それが探査衛星を前進させていることがわかる。それがイオンであり、その粒子の一つずつの様子を計算機を用いてシミュレーションしているのだという。研究者はこうした装置を利用してさまざまな角度に回り込んだり、条件を変えるなどして更なる技術の発展につなげていく。「こうしたシミュレーションを利用すると自分が行けない場所、行けない時間そこへ自由に行くことができることで新しい知見が得られる。それが新しいものをまた生み出す。」研究者の自信と夢と未来への希望が表情ににじんでいる。



番組では、次に、こうしたスパコンの計算を製品開発に活かしている企業の例として住友ゴム工業を挙げていた。「エナセーブプレミアム」は燃費性能で最上級のトリプルAを達成したタイヤ。その製品開発にかつて世界一を取ったスパコン地球シミュレータ」が活躍した。タイヤの性能はゴムの中に含まれるシリカと呼ばれる補強材の配置によって決まる。今までは実際にゴムを作って顕微鏡で確認していたため実験に1年以上かかっていたが、ナノレベルでの構造シミュレーションができるようになったことで研究実験期間が数時間に縮まったという。



もう一つの例として挙げられたのは「気象データの予測」。現在の気象庁スパコンは日本を5kmに区切って計算、予測をしているが、雲は数kmから10km程度あるため構造が表現しきれず、天気予報の不確実性を高めているらしい。スーパーコンピュータ「ツバメ」で計算量を1000倍にして間隔を500mに縮めると、まるで衛星写真で撮ったように非常に正確に雲が流れているかがわかるようになる。これをもとに気象予報をすると、どこで集中豪雨がある等が非常に正確にわかるという。しかも「ツバメ」は「京」の5分の1の処理能力だそうだ。



夢が広がる。



「これからの研究にはスーパーコンピュータが必要になる。世界トップクラスのスパコンを持つことはいろんな分野で日本がリードしていくことになるのではないか。」



前出の横川博士が誇らしげに語っていた。



その姿はあたかも鉄腕アトムを開発したお茶の水博士のよう。



果たして「京」はアトムのように日本を救うことができるのだろうか。