銀色の物差し

駅の階段を降りていると前を歩いていた人が後ろポケットから財布を取り出した時に何かが落ちた。



それはカシャーンという音を立てて階段に横たわった。



銀色をした15センチ程の物差し。



一瞬鉄製かと思ったけれど、その音と跳ね方から考えるとアルミ製に違いない。



その人はすぐに気づき、自分で拾い上げ、無造作に再びポケットにしまい込んだ。



それにしてもポケットにそんな道具を持ち歩いているあの人はどんな仕事をしているのだろう。



30代半ばくらいの男性でがっちりした体躯に颯爽とした身のこなし。



建築士のように見えるし、大企業の製造関係の設計担当のようにも見える。もしかすると工業製品の独立系デザイナーかもしれない。



或いは、単なる計測マニアということもあり得る。



空想は広がっていく・・・



その空想の大きさも銀色の物差しで測れるといいのに・・・