暗闇に生きる

全盲の方からお話を聞く機会があった。



一口に目が見えないと言っても、ある程度の明るさがわかる人もいれば、視界の中心部分は見えるけれど周りが見えない人もいるし、中央だけが見えない人もいる。



お話を聞かせて下さった方は生まれた時からほとんど見えず、幼い頃に左目で微かに見えた色を何となく覚えているが中学一年生の頃から全盲とのこと。



普段の生活は練習と工夫で何とかなる、一人暮らしも大丈夫、毎日電車とバスを乗り継いで仕事に行くし、料理もスポーツもする、



暗闇の中に生きているにも拘らず、明るく日々の生活の工夫について話してくれた。



ペットボトルの飲み物を二本買った時には、どちらがお茶でどちらが紅茶かを聞いて、輪ゴムを一方にかけておくことで判別する、最近シャンプーやリンスにギザギザが付いていて触るとわかるので大変助かっている、メーカーによってはケチャップやマヨネーズにも見分けが着くよう点字があしらわれているそうだ。お札には区別がつくように印が付いているもののよおく触らないとわからないし、皺がよると判別できなくなるようで、自分でお札を財布に仕舞う時に千円札はそのまま、五千円札は二つ折、一万円札は三つ折にする等の工夫をしているという。



8年前から盲導犬との生活が始まり、随分楽になったそうだ。



盲導犬と聞くとスーパードッグをイメージする人が多いけれど、人間と同じようにいろんな性格があってユーザーとの相性もあるらしい。一般の人ができるだろうと思っていることでも実際はできないことも多いという。



どこかに行くときには自分で下調べをしなければならないし(犬は何がどこにあるのかを知らない。←考えてみれば当たり前のこと。でも、一般の人の多くは犬がどこにでも連れて行ってくれると思っているらしい)、電車やバスに乗った時にどの席が空いているかを教えてくれない(だから、ドアの近くに立っていることが多いけれど、体調の優れない時や遠くに行く時には誰かに教えてもらえると嬉しいし、大変ありがたい)、信号の色も犬は見分けがつかないので車の音や周りの人の歩く音で飼い主が判断するとのこと(だから、今青ですよ、と声をかけてもらえると大変嬉しい)。



街角でよく見かけると思っていた盲導犬も随分増えたとは言え、まだ全国に1000頭余りしかいない。



生後約2ヶ月から1歳になる頃までの約10ヶ月間はパピーウォーカーと呼ばれるボランティアの家族の下で育ち、1歳を過ぎた頃から基礎訓練を受ける。適性を見られた上で試験を受け、合格した犬たちだけが盲導犬になる。10歳で引退するまで。



最後に話されていたことが胸を打った。



「信号機には時々カッコーカッコーとかピヨピヨ鳴るものがありますが、それが増えるよりも気軽に声をかけてくれる人が増える方が嬉しいです。」



「そのためにも今日聞いた話をできるだけ多くの人にしていただければ、これほど喜ばしいことはありません。」



暗闇に生きる人たちに一筋の光を感じてもらうために、



できるだけのことをしたいと思った。