地下から地上に出てみると外の世界は薄暗かった。
「午後4時過ぎでこんなに暗かったっけ?」
そう思ったとたん、空が分厚い灰色の雲に覆われていることに気がついた。空は今にも泣き出しそうだ。
自転車に跨り、目的地に向けて漕ぎ始める。雨が降る前にと、自然にスピードが上がる。
しかし、無情にも雨は落ちてくる。容赦なく。
雨の中を漕いでしばらくするとあることに気がついた。
どうして自分はこんなに顔をしかめているのだろうと。
天から落ちてくる雨はそれほどの強さではない。目に入るほどの勢いはないし、自転車の運転に支障をきたすほどの強さでもない。にも拘わらず、雨を忌み嫌うかのような表情をしている自分がいた。
顔の表情にしばし気を配ってみる。
次に、口角を上げて笑ってみる。そうすると落ちてきた雨が苦痛でも何でもないことに気がつく。それまでのしかめっ面は雨を避けるためというよりは、「よりによって自転車に乗っている時にどうして雨が降ってくるんだろう。なんという不運。」と、自分を呪うための表情だったのでは、という思いが頭を過る。
雨が降っているという事実に変わりはない。
しかし、当たり前のように自動的にしかめっ面を作っては自分の不幸を噛み締めていた自分が滑稽に思えた。
笑うと気分が明るくなった。
心が軽くなった気がした。
しばらくすると、
空も明るくなり、陽が差してきた。