堪える報酬

 
クールビズ用スラックスを購入しようと思ってあるお店を訪ねた。
 
 
お店のあちらこちらに「2本購入で半額」のポスターが掲示されている。念のために店員さんに対象商品を確かめてみると「全品が対象ですよ」との答え。
 
 
それならということで少し奮発して良いもの数点を選び試着室へ。
 
 
何本か試した後、同じ店員さんに裾上げのお願いをし、購入を決めた2本を手渡すと今度は「大変申し訳ないのですが、これらは半額対象外です。」との回答。
 
 
思わず「はぁ? さっき尋ねたばかりじゃないですか。」と返すとただただ平謝りで対象商品についての説明に終止する。
 
 
「わかりました。じゃあまた見てみます。」と怒りを堪えつつ再び気に入る商品を探したものの眼鏡にかなう品は見つからず、結局最初に選んだ半額対象外の2本を買うことにした。
 
 
同じ店員さんにさっきのものにしますと言うと取り置きされているはずの商品から既に裾上げのピンは取り払われていてまた試着室に舞い戻ることに。
 
 
幾度となくこみ上げてくる怒りを抑えて最終的に支払いをしようとするとその店員さんが急に小声でこう言った。
 
 
「先ほどからたいへん申し訳ありません。お詫びと言っては何なんですが、実は先日まで行っていた20%OFFを適用させていただきます。」
 
 
その一言に自分でも驚くほど一瞬で機嫌が直った。
 
 
気分が良くなり、急にニコニコし始めた。 
 
 
自分の現金さに半ばあきれるけれど、これほど人は簡単に気分が変わるものだと感心もした。
 
 
何度もこみ上げてくる怒りを堪えた報酬は悪くないと思った。