がらがらどん

 
 
三びきのやぎのがらがらどん」という絵本がある。
 
 
絵本作家マーシャ・ブラウンの1957年の作で世界中で人気のある傑作だ。
 
  
三びきのやぎのがらがらどん (世界傑作絵本シリーズ)

三びきのやぎのがらがらどん (世界傑作絵本シリーズ)

 

  

それほど長い話ではないので全文載せさせていただこう。

 

むかし、三びきの やぎが いました。なまえは、どれも
がらがらどん と いいました。
あるとき、やまの くさばで ふとろうと、やまへ
のぼっていきました
 
のぼる とちゅうの たにがわに はしが あって、
そこを わたらなければなりません。はしの したには、
きみのわるい おおきな トロルが すんでいました。
ぐりぐりめだまは さらのよう、つきでた はなは
ひかきぼうのようでした
 
さて はじめに、いちばん ちいさいやぎの
がらがらどんが はしを わたりに やってきました
かた こと かた こと と、 はしが なりました。
 
「だれだ、おれの はしを かたことさせるのは」と、
トロルが どなりました。
「なに、ぼくですよ。いちばん ちびやぎの
がらがらどんです。やまへ ふとりに いくところです」と、
その やぎは とても ちいさい こえで いいました。
「ようし、きさまを ひとのみにしてやろう」
と、トロルが いいました。
 
「ああ どうか たべないでください。ぼくは こんなに
ちいさいんだもの」と、やぎは いいました。「すこし まてば、
二ばんめやぎの がらがらどんが やってきます。ぼくより ずっと
おおきいですよ」
「そんなら とっとと いってしまえ」と、トロルは いいました。
 
しばらくして、二ばんめやぎの がらがらどんが
はしを わたりに やってきました。
がた ごと がた ごと と、はしが なりました。
 
「だれだ、おれの はしを がたごとさせるのは」と、トロルが
どなりました。
「ぼくは、二ばんめのやぎの がらがらどん。やまへ
ふとりにいくところだ」と、その やぎは、いいました。
まえの やぎほど ちいさいこえではありません。
 
「ようし、きさまを ひとのみにしてやるぞ」と、
トロルがいいました。
 
「おっと たべないでおくれよ。すこし まてば、
おおきいやぎの がらがらどんが やってくる。
ぼくより ずっと おおきいよ」
「そうか、そんなら とっとと きえうせろ」と、
トロルがいいました。
 
ところが そのとき、もう やってきたのが
おおきいやぎの がらがらどん。
がたん、ごとん、がたん、ごとん、
がたん、ごとん、がたん、ごとん と、はしが
なりました。あんまり やぎが おもいので、
はしが きしんだり うなったりしたのです。
「いったいぜんたい なにものだ、おれのはしを
がたぴしさせる やつは」と、
トロルが どなりました。
 
「おれだ! おおきいやぎの がらがらどんだ!」
 
と、やぎは いいました。それは
ひどく しゃがれた がらがらごえでした。
 
「ようし、それでは ひとのみにしてくれるぞ!」
と、トロルが どなりました。
「さあこい! こっちにゃ 二ほんの やりが ある。
これで めだまは でんがくざし。おまけに、おおきな
いしも 二つ ある。にくも ほねも こなごなにふみくだくぞ!」
 
こう、おおきいやぎが いいました。
そして、トロルに とびかかると、つので
めだまを くしざしに、ひづめで にくも
ほねも こっぱみじんにして、トロルを
たにがわへ つきおとしました。
 
それから やまへ のぼっていきました。
 
やぎたちは とても ふとって、うちへ あるいてかえるのも
やっとのこと。もしも あぶらが ぬけてなければ、まだ
ふとっているはずですよ。そこでー
 
チョキン、パチン、ストン。
はなしは おしまい。

 

瀬田 貞二による訳が見事だ。

 

"Three Billy Goats gruff"という原題の"gruff"はしわがれ声と普通は訳す。それを「がらがらどん」とすることで日本語としての作品に魂が込められた。

 

肝心の「絵」をここで見せられないのは残念だけれど、幼児向けの絵本とは思えないほど荒削りで大胆なイラストは怖ささえ感じられるほど。

 

小さな子どもには怖すぎるのでは? 

 

と思いつつもうちの子どもたちはいつも釘付けで何度も何度も読んでくれとせがまれた一冊。

 

その最後が謎だったけれど、今回こうして読み直してみて、物語を自分で打ってみてハッとした。

 

山へ太りに行ったやぎたちが戻ってきて、

 

「あぶらがぬけていなければ」

 

を、まだ太っていれば、と読むと、

 

チョキン、パチン、ストン

 

という擬音語は、

 

やぎたちが解体される音に他ならない。

 

ということは・・・

 

あくまで一つの解釈に過ぎないけれど、これもまた「賛否両論ある絵本」に数えられる一冊なのかもしれない・・・

 

いつの日かまた子どもたち(孫?)に読み聞かせができる日が今から待ち遠しい。(となりのトトロのエンディングでサツキとメイがお母さんに絵本を読んでもらっていたように・・・<三匹の山羊>)