「紙粘土ありますか?」
小学校4年生の娘は極度の恥ずかしがり屋。
夏休みの工作に必要な紙粘土を一人で買いに行ってもその一言がなかなか言えない。
持たせていたミマモリ携帯で何度も何度も電話をかけてきては、
「お店の人がいないんだけど、どうすればいい?」
「いないわけないよ。お店の中歩き回ってたら誰かいるはずだよ」
「わかった」
しばらくすると、またかかってくる。
「お店の人が忙しそうにしてるけど、話しかけていいの?」
「いいよ」
「何て言えばいいの?」
「すみません、紙粘土ありますか? でいいんだよ」
「わかった」
すぐ切って、再チャレンジ。
しばらくすると、また電話がかかってきて、
「やっぱり無理!」
「えー、どうして?」
「だって、もしいろいろ聞かれたらどう答えたらいいかわからないんだもん」
「聞かれたりしないよ。あーたんならできるよ。もう一回がんばってごらん」
「わかった」
そんなやりとりを何度か繰り返して、ついに
「できた! でも、紙粘土なかった」
ガクッ
それでも電話越しの声はどことなく嬉しそう。
帰ってきてからもちょっとすまし顔で
「どうしてあんな簡単なことができなかったかよくわかんない。ホント簡単だった。」
と。
我々大人も案外9歳の女の子と同じことをしているのかもしれない。
追伸
その後の清々しい娘の顔を見て、またちょっと成長したな、と思えて嬉しくなった。