未来の記憶

 

時間について考え続けている。

すると、こんな記事に出合ったことを思い出した。

あまりにもドンピシャだったのでそのまま掲載させていただく。

皆さんへの参考にもなるかと。

 

 http://toyokeizai.net/articles/-/172098?display=b

新年度に入り、新しく部下ができた人もいるだろう。しかし、人を指導するということは思った以上に難しく、うまく「人を動かせない」「人がついてこない」と悩む人も多いのではないだろうか。
「リーダーシップ」の発揮には、先を見通す「未来記憶(展望記憶)」の活用が有効だ、と言うのは、長年の実践研究と脳科学や心理学、認知科学の知見から独自の勉強法を確立している学習コンサルタント・宇都出雅巳氏。彼が、近著『記憶力が最強のビジネススキルである』にもまとめた、記憶の活用術を聞いた。

 

人を引き付け、動かすことができるリーダーというのは、例外なく「このチームで、必ず○○を成し遂げる」といった「未来に対する強いビジョン」を持っており、それを固く信じています。リーダーシップには“ビジョン”が不可欠だということは、近年のリーダー論の中でもよく言われていることなのでみなさんもご存じでしょう。

この「ビジョン」もつまりは「未来記憶」にあたります。この未来記憶が強ければ強いほど、明確な「ビジョン」を持っているということになります。

しかし、この「未来記憶」が過去の記憶と違う点は、文字どおり「未だ来ていない」物事への記憶であるところ。ですから、それを記憶として定着させるためには、強い想像力が必要です。それがないと、目の前の仕事に追われていたり、ちょっとしたトラブルが起こったりするだけで、ビジョンが揺らいでしまいます。そういうリーダーは、人を引き付け、動かすことはできません。

確固たる「ビジョン」を持った魅力的なリーダーとなるために、未来記憶を強化できる方法があります。

五感をフル稼働して未来をリアルに思い浮かべる

未来という、ある意味、はかないものに対する記憶を強化し、想像力を高めていくために必要なのは、「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」の「五感」です。

「あの料理のおいしさがいまだに忘れられない」「この音楽を聴くとあのときの情景を思い出す」ということがあるように、過去の記憶は五感により形づくられています。

ですから、「未来記憶」も同じように、まるで本当に起こったことのようなリアルな「五感」をプラスすることで、より強い記憶となるのです。

この強化法を、「ビジョン」を確固たるものにするために活用してみましょう。

まず、自分が目標とする「ビジョン」が定まったら、それをできるだけ詳細に頭の中に思い描きます。五感をフル活用して、自分の描く未来が訪れたそのときに聞こえる声や音、見える景色、体の動き、鼓動などをできるだけ詳細に自らの頭の中にありありと描き出してみましょう。

まだ訪れたことのない場所が関係するなら実際に行ってみて、その風景や音、風の匂いなどを体験する、あるモノが関係するならそれを実際に見て触れてみる、そういったことで自分の中にない記憶を補強することも有効でしょう。

それを繰り返し、詳細な未来をリアルに思い浮かべることができるようになったら、次に加えるのが「感情」です。

記憶を強めるために有効なのは、「インパクト×繰り返し」だといわれています。「インパクト」とは、動いた感情の大きさです。実際、あなたの過去の記憶に残っている物事は、毎日繰り返し覚えたことのほか、強く感動したり、とてもびっくりしたり、悲しかったり、とにかく感情が大きく動いたエピソードではないでしょうか。

未来記憶も同じで、定着させるためには、感情が大きく動くようにする必要があります。

では、「まだ起きていないことに対して感情を大きく動かす」ためには、どのようにすればいいのでしょうか。

ここで私が「エモーション化」と呼ぶ方法をご紹介します。

体を動かすことで感情も揺り動かされる

「エモーション」(感情)という単語の中には「モーション」(動き)という言葉が含まれています。つまり、感情と体の動きは切っても切り離せないもの。

「楽しいから笑うのではない。 笑うから楽しいのだ」というアメリカの哲学者・心理学者であるウィリアム・ジェームズによる有名な言葉もあるように、体に働きかけることによって、感情も揺り動かすことができるのです。

五感を駆使することによって、「ビジョン」を明確に思い浮かべることができるようになったら、今度はそれに沿って体を動かしてみましょう。

自身が統括するプロジェクトやチームが担っているミッションを達成したときのことを思い浮かべ、ガッツポーズをしてみる。その際に目標達成に尽力してくれた部下に握手を求めたり、肩をたたいたりするアクションをしてみる……。

このように実際に動いてみると、そのときに感じるであろう感動や喜びといった強い感情が湧いてきます。

この「モーション」によって感情を強め、そこからさらに細かい情景を想像して感情を強めていくのが「アンプリフィケーション」(増幅)です。

「モーション」によって感情が高まるにつれて、さらに克明なビジョンを思い描くことができます。ビジョンが達成されたときのその場にいる部下たち、お客様の表情、そのときに聞こえる声や音も、もっと詳細に想像してみましょう。誰の声が聞こえているのか? それはどんな言葉なのか? これまで以上に細かい情景を頭の中に描き出していくのです。

 
こうして作り出していくリアルなビジョンは、そのときに湧き起こる感情を体の奥からより強く感じさせてくれるという、さらなる相乗効果をもたらします。

こういった行動を日々繰り返すことで、未来記憶は徐々に定着していくのです。

リラックスした状態を作り出すことがポイント


『記憶力が最強のビジネススキルである』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)
このエモーション化を進めるうえでのポイントは、リラックスした状況で行うこと。前述のとおり、感情と体の動きには関連性があるため、体が緊張して固くなっていると、感情も動かなくなってしまうのです。緊張していると顔もこわばり、笑顔すら出てきませんよね。

自室や風呂の中など、自分が大いにリラックスできる場所や状態で、これらの「ビジョンを強化する」トレーニングをしてみてください。

リラックス状態の中でひとつのことに心を集中させるのは、「瞑想」に近いかもしれませんね。

また、日頃からリラックスを心がけることも重要でしょう。仕事中など、無意識に体が固くなってしまう場面が続く場合がありますが、そんなときにおすすめなのが、「胸を開く」ことです。

やり方は簡単。深呼吸をしながらひじを後ろに引き、胸を前に出せばOKです。胸には私たちの命の中心ともいうべき心臓があります。緊張すると、無意識に胸を守ろうとして、腕組みをしたり肩に力が入ったりしてしまいます。そこを開くことで緊張が解け、リラックスした状態を作り出すことができるでしょう。

以上のことをまとめると、次のようになります。

(1)未来記憶である「ビジョン」を、五感をフル稼働し詳細に思い浮かべる

(2)思い浮かべたビジョンに沿って体を動かし(モーション)、感情(エモーション)を呼び起こす

(3)リラックスした環境をつねに作り出す

さまざまな障害の中でも揺るぎなく、周りの人を引っ張っていくためのリーダーシップを身に付けるために、「未来記憶の強化と定着」トレーニングはとても有効です。

この春、新リーダーとなったあなたも、ぜひ試してみてください。

(構成:山岸美夕紀)

  

 

我々が時間と思っているものは本当は我々自身が自ら創り出している想像の産物なのかもしれない。

 

人生とは、未来の記憶を手繰り寄せる作業なのだという気がした。