持続可能な社会を作るために

 

ここ数年行なっている定点観測の一つに日本経済新聞の元日の社説がある。

 

持続可能な社会を作るために最も必要なのは「強烈な危機意識」ではないか。

 

「日本はスゴイ! 日本人は素晴らしい!」

 

そんなことを言っている限り人は変わらない。

 

変わる必要はない。

 

失われた30年がどんどん伸びていき、気がつくと周回遅れになって手遅れになってしまう。

 

今年の日経の社説は当たり前過ぎてつまらない内容と言わざるを得ない。

 

今の日本の状態は待ったなしにも拘らずその緊迫感は伝わってこない。

 

持続可能な社会を作るためにはこれまでやってきたことを否定して変わり続けなければ生き残ることは不可能だ。

 

諸行無常であり、ダーウィンの言葉の通りなのだ。

 

最も強い者が生き残るのではなく、
最も賢い者が生き延びるのでもない。

唯一生き残ることが出来るのは、
変化できる者である。

 

[社説]次世代に持続可能な国を引き継ごう:日本経済新聞

[社説]次世代に持続可能な国を引き継ごう
 
 
社説
2020/1/1 0:00 [有料会員限定]
令和になって初めての新年を迎えた。世界景気は減速し、米中新冷戦や朝鮮半島情勢などに不透明感も漂う。日本は改革を進める年にしなければならない。企業は成長のくびきを解き放ち、国は社会保障やエネルギー・環境政策を持続可能な仕組みに改める必要がある。将来への不安を次世代に引き継いではならない。

この国をいかに次世代に引き継いでいくのかが問われる
東京でオリンピック・パラリンピックが開かれる。前回は高度経済成長のさなかの1964年だった。その4年後には世界2位の経済大国になり、「奇跡の復興」を世界に印象づけた。

企業は人事改革を急げ

当時に定着した慣行や制度で、いまの日本でもみられるものがある。大企業に色濃く残る年功賃金や終身雇用制度である。売上高が右肩上がりの時代は人手不足が深刻で、大量生産が中心だったため、勤勉で均質な労働力が求められた。それに適した雇用形態や慣行が根を張った。

医療の国民皆保険や年金制度も人口増や高成長があったから60年代に基盤が整った。妻が専業主婦として家庭を支える「モデル世帯」がいまも指標に使われるのは、この時代の残影といえる。

第1になすべきは企業の変革である。社会保障などを担う国の体力を強くするには、産業競争力を高めねばならない。人事制度の見直しに着手した会社は多い。デジタル化やグローバル化は、従来通りのやり方では対応できないことに気づいたのである。

生産性を引き上げてイノベーションを起こすには、たこつぼの組織を壊し、外部人材を起用し、意思決定の速度を上げることが欠かせない。競争環境の変化を先取りし、攻める分野に資源を集中する事業の棚卸しも必要だ。

経営陣が改革を進めるには、年功賃金の見直しや多様な雇用形態の実現などが必要だ。「働き方改革」が進めば女性は出産、育児がしやすくなる。夫も育休取得や家事参加に積極的になるだろう。

日本の人口動態は激変した。戦後すぐの47年から49年の3年間に毎年270万人弱が生まれた団塊の世代と比べ、約70年後の2019年の出生数は3分の1にも満たない。現役世代2人が高齢者1人を支える現在の状況が、彼らが働き手となる25年後には1.4人で1人を支えることになる。

第2になすべきは、そんな事態を見越し、国が責任をもって少子化対策や持続可能な社会保障への転換を推進することだ。

現役世代が引退世代の生活を支える従来のやり方を続けるのには限界がある。22年から団塊世代は順次、後期高齢者である75歳を迎える。雪だるま式に増える医療費は国の財政を圧迫する。企業の健保組合は拠出金の増大で破綻しかねない。政府は昨年末、後期高齢者の医療費の自己負担を「原則2割」に引き上げようとしたが、「一定所得以上は2割負担」に後退し、今年6月にまとめる最終案に詳細を委ねた。

高度成長を支えてきた団塊の世代からは「なぜ前の世代と扱いが変わるのか」という不満も出るだろう。だが、高齢者の負担増がないままだと、現役世代に税金ないし保険料のいずれかの負担増の形でしわ寄せがいく。

高齢者も応能負担必要

年齢にかかわらず、負担能力に応じて診療代などを払う「応能負担」を徹底する。これは社会保障全般に共通する課題だ。

第3にすべきことも、国の仕事だ。エネルギー・環境政策を一体として立案し、工程表をつくることである。原子力発電所の再稼働は立地自治体の理解を得るのが容易ではない。他方、緊急避難的に依存度を高めた石炭火力による二酸化炭素(CO2)の排出量増加が国際社会で非難されている。

国のエネルギー基本計画は30年のベースロード電源の比率を原発20~22%、石炭火力26%としているが、前提である原発30基の再稼働は極めて厳しい。再生エネルギーを使いやすい電源にし、その比重を高めるイノベーションが是が非でも必要なのだ。

リチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏は「電気自動車を大規模にシェアする社会になれば、環境負荷は大幅に減るし、消費者のコストも安くなる」と話す。

こうした課題は、政治の強いリーダーシップなしに実現しない。安倍晋三首相は21年秋に自民党総裁の任期切れを迎える。その前年は後継を巡り「政治の季節」になりやすい。それをむしろ奇貨として、持続可能な国づくりの具体策を競う年にしてほしい。