資本主義を鍛え直す

新年明けましておめでとうございます。

2022年がスタートしました。

昨日、去年の大晦日に神戸三宮の近くにある市場を訪ねた。

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https://www.ichiba-kobe.gr.jp/ichiba09/

 

昔ながらの「買い物」は、自分でも驚くほど心躍る体験となった。

 

お客さんを知り尽くしたお店の人がお客さんの求めているものを聞き、取り揃えた商品群から一番良い品を選び出す。また、その日入荷のオススメ商品を推す。

 

そんな当たり前の光景が新鮮に感じられたのは普通の「ショッピング」では失われがちな人と人との血の通ったコミュニケーションがあったから。

 

巨大資本が個人商店を駆逐していく世界をやむを得ないと感じつつも資本主義の原点を体感し、疑問を持っていたところにここ数年定点観測している元日の日本経済新聞の社説を読んで膝を打った。

 

資本主義を鍛え直す年にしよう
 

2022/1/1 2:00 朝刊 [有料会員限定]
今年こそ良い年にしたい。そんな思いで多くの人が新たな年を迎えたことだろう。2020年に世界で感染が爆発した新型コロナウイルスの猛威は2年たっても衰えをみせない。経済もコロナ禍前の水準には戻らず、いまだに非常時のもとで生活していると感じている人が大半ではないだろうか。

新型コロナは世界で500万人を超す命を奪っただけではなく、経済と社会を大きく変えた。

コロナ禍でひずみ露呈

飲食・観光など対面サービスを中心に大きな打撃を被った産業がある一方で、リモートワークの定着などで新規需要を取り込んだところもある。急に職を失った人もいれば、経済面ではさほど影響を受けなかった人もいる。

コロナ禍による供給網の途絶や原油高が物価の上昇を招き、米欧の中央銀行は金融緩和を縮小し始めた。

コロナ禍は世界がこれまで内包していた問題をあぶり出した。米中などの国家間の対立・摩擦や、国内の貧富、人種、性別などによる分断がこれまでより先鋭化してきたようにみえる。

このことは経済の根幹の資本主義そのものを揺るがしている。世界では、日米欧など民主主義型の資本主義と、中国、ロシアなど権威主義型の資本主義が対峙する構図が鮮明になっている。

民主型資本主義国の多くは、コロナ禍で困窮する人々への安全網は十分なのかという問いを突きつけられた。日本を筆頭に高齢化が進む国では、社会保障支出の増大にコロナ対策の支出も重なって、政府債務が膨れ上がっている。

デジタル化が進むと、企業の投資は工場・店舗など有形資産からソフトなど無形資産に重点が移り、雇用を生む力は小さくなっていく。デジタル革命はアイデアを生む少数に利益が集中する「勝者総どり」を招きがちでもある。

権威型資本主義の筆頭の中国も試練の時にある。1978年に改革開放路線に転じ、社会主義市場経済のもとで高成長を謳歌したが、最近はひずみが目立つ。習近平国家主席は、格差是正のため「共同富裕」を掲げ、大手IT(情報技術)、不動産など民間企業への統制を強めている。

新型ウイルスが2年前に確認された中国は強権的な措置で感染を抑えこんだ。民主国家でも国家の介入を強化する政策が目立ってきているが、中国のように言論や行動の自由を厳しく制限・監視する権威型に進むならば、人々の幸福にはつながらない。

振り返れば資本主義は試練の歴史だ。18世紀の産業革命で確立した資本主義は世界に広がったが、1930年代の大恐慌で危機に見舞われた。その後、政府の需要創出を重視するケインズ経済学の登場で資本主義は進化した。

しかし、70年代には政府の肥大化など制度疲労が深刻になり、80年代にはサッチャー英首相やレーガン米大統領の政策に代表される小さな政府への改革、いわゆる新自由主義が広がった。

2008年のリーマン危機や今回のコロナ禍を経て再び政府の役割を大きくしようという機運もある。だが、多くの国が無尽蔵に財政支出を増やせる状況にはない。

かつて資本主義の失敗は極端な思想や戦争を招いた。大恐慌後に全体主義共産主義が伸長し第2次世界大戦、その後の東西冷戦につながった。高齢化、デジタル化などの構造変化で制度疲労が目立つ資本主義のほころびを繕う不断の改革が、民主主義を守るためにも重要になっている。

国際公共財を守れ

グローバル・コモンズ(国際公共財)への対応も21世紀の資本主義が抱える緊急課題だ。その最たるものが地球温暖化である。世界経済が長らく依存してきた化石燃料から脱却する脱炭素革命は地球規模の取り組みが必要で、経済のありように大変革をもたらす。

サイバー空間への対処も同様だ。デジタル技術は生産性を高め、成長を促す一方、「GAFA」など巨大IT企業による寡占、SNS(交流サイト)による社会・政治問題も引き起こしている。

各国当局は独占禁止法やそれぞれの制度で対処しているが、国境のないデジタル市場には国際的なルールづくりが欠かせない。昨年のデジタル課税の国際合意はその一歩として評価できる。

新型コロナをはじめ感染症対策でも、途上国へのワクチン支援など国際協調が必要なのは言うまでもない。

体力低下が目立つ資本主義を磨き鍛え直す。その契機になる年にしたい。

 

我々はもがき苦しみながらも新しい世界を生き抜こうとしている。

 

再構築しようとしている。

 

忘れてはならないのは、我々自身の「原点」。

 

「資本主義を鍛え直す」のもいいけれど、失ってはならないものがあることを常に念頭に置いておきたい。