"陰の極"までやり抜けば、劇的に好転する
かの日本電産を一代でここまで築き上げた永守重信氏の「やりとげる力」からの一節である。
以前、傘下に収めた大手電気機器メーカーの子会社の場合、私が出向いて最初にしたことは、トイレットペーパーの購入価格を聞くことだった。ところが総務課長も庶務の女性も把握してなかった。調べてみると、日本電産より二割以上も高い値段で買っていた。ということは、この会社は多くの物品を二割以上高く買っている可能性があるということだ。
次にゴミ箱をすべて持ってこさせて、ひっくり返してみた。すると、まだ使えるボールペンや消しゴム、ほとんど印刷されていない白い紙などが次々に出てくる。私がつきっきりで分別したところ、七割が使えるものだった。
ゴミ箱にも、工場で扱う原材料がそのまま捨ててあったりする。それで、社員一人ひとりにコスト意識がまったく欠如していたことがはっきりわかる。
私は毎週のように現場に出て、具体的な事例を突破口に意識改革を迫った。一つひとつの削減額は大したものではないかもしれないが、会社全体の規模になると莫大な金額になる。それが原価や経費の削減につながったのだ。
社員の意識も徐々に変わり、それが力になって利益を押し上げていった。その結果、創業以来、赤字とわずかな黒字のくり返しだったところが、たった一年で営業利益率が十二パーセントに跳ね上がったのだ。新製品も出ていない。社員も以前のままだ。何が変わったのかといえば、それは社員の意識だった。
その過程で私は何度も「陰の極」までやったのかと問い直した・・・
「徹底する」
その表現と気持ちはあってもそれがあまりにも普通になってしまうことで効果が出なくなる。
「陰の極」までやり尽くす
たとえ一時的であれ、集中し、陰の極までやり尽くすことで意識が変わり、定着に繋がるのだと感服した。