砂漠にある信号機

「砂漠に信号機があって、赤信号が灯ってたらどうする?」

 

家族との夕食時にそんな質問をした。

 

山ほどの質問が飛んでくるのを制して、単純に質問に答えてもらいたいと伝えると「止まる」と今春高校生になったばかりの娘が答える。

 

「理由も教えて」と言うと、ちょっと考える表情が浮かんだので大学一年生になった息子を見るとこんな回答が返ってきた。

 

「普通に進む。だって砂漠には車は来ないし、進んでも問題ないから」

 

それを聞いてか聞かずか娘が言う。

 

「信号が赤なら止まるのがルールだから」

 

二人の回答は予想通り。

 

砂漠に信号機は普通に考えて、ない。

 

なぜなら車は走っていず、通行人やドライバーにリスクがなく、その必要性がないから。

 

架空の状況でこんな質問をしたの生真面目な娘がルール(校則)を守らない新しいクラスメートにフラストレーションを感じていたから。

 

クリティカルシンキング(批判的思考)って知ってる? 批判的って言うと日本語的にはネガティブなイメージがあるかもしれないけど、世の中にあるものは必ずしも正しいものばかりとは限らない。人によって、モノの見方によって、感じ方や理解の仕方が全く異なることだってあるんだ。大事なことは、物事がなぜそうなのかを考える癖をつけること。信号が赤なら止まれ、ルールを守ることは当然大切なことだけれど、何のために信号があるのか、そこにその時に必要性があるのか、そこまで考えて答えを出すかどうか、それがこれからの世の中重要になってくると思うんだ・・・」

 

そんな説教じみた話をした。

 

砂漠にある信号機はいつの間にか「緑」に変わっていた。