分断を越える

新年明けましておめでとうございます。

戦いと混迷に満ちた2022年を終え、新しい年が少しでも明るさを取り戻せるようにしていけるようできることを全てしていきたいと思います。

ここ数年定点観測してきた日本経済新聞の社説を今年も抜粋させていただこう。

分断を越える一歩を踏み出そう:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67281250R00C23A1PE8000/

分断を越える一歩を踏み出そう
  
2023/1/1 2:10 朝刊 [有料会員限定]
今年こそ良い年にしたい。そんな思いで多くの人が新たな年を迎えたことだろう。ちょうど1年前の2022年元日付の社説はこんな書き出しで始まった。そうした願いもむなしく、22年は混迷の1年として歴史に刻まれることになるだろう。

北京冬季五輪の閉幕直後にロシアがウクライナに侵攻、国連安全保障理事会常任理事国の暴挙は世界を震撼(しんかん)させた。

「2つの罠」のリスク

日米欧など主要先進国はロシアに対し貿易やドル決済の制限など制裁措置を打ち出し、世界の物流やお金の流れが停滞した。ウクライナ危機でエネルギー価格が高騰、世界の多くが約40年ぶりのインフレに見舞われた。

安全保障や技術覇権をめぐる米国と中国の対立も深まった。8月の米下院議長の台湾訪問の直後に中国が実施した軍事演習で、日本の排他的経済水域EEZ)に弾道ミサイルが着弾、日本でも防衛力強化の議論が高まった。

米国では11月の中間選挙で激戦が繰り広げられ、議会上院は民主党、下院は共和党がそれぞれ過半数を得た。中国の習近平国家主席は3期目続投を決めたが、ゼロコロナ政策への不満から市民の抗議活動が広がった。日本では7月の参院選の遊説中に安倍晋三元首相が銃撃され死去するという悲劇が起こった。

新型コロナウイルスの感染拡大から3年。世界の分断はさらに深まっているようにみえる。世界は「2つの罠(わな)」に陥りつつあるのではないか。

1つ目は「ツキディデスの罠」だ。歴史を振り返ると、覇権国が台頭する新興国と衝突し戦争につながる事例が多いという米ハーバード大学のグレアム・アリソン教授が提唱した概念だ。同教授は昨年の日本経済新聞とのインタビューで「米中はまさにその脚本通りに進んでいるようにみえる」と警鐘を鳴らした。

2つ目は「キンドルバーガーの罠」だ。英国から米国への覇権移行期の大国の指導力不在が1930年代の大恐慌と第2次世界大戦につながったとする経済学者の分析をもとに、ジョセフ・ナイ元米国防次官補が命名した。気候変動や食料危機など地球規模の課題解決に、米中など大国が責任を十分に果たしていない現状がこれにあてはまるかもしれない。

2つの罠を回避するには、大国間の対立を緩和し、国際協調を立て直す必要がある。それにはロシアのウクライナへの侵攻を一刻も早く終わらせ、国連や世界貿易機関WTO)など国際機関の機能を回復しなければならない。

分断が目立つ世界にも、目をこらせば修復への芽がないわけではない。コロナ禍で途絶えていた人々の対面交流も復活し始めた。昨年11月には米中、日中の首脳会談が実現、首脳同士の直接対話が動き出した。対立点の多い国同士こそ、相互の行動の誤解が紛争をエスカレートさせないよう意思疎通を密にする必要がある。

分断の政治にも修復の兆しはある。昨年11月の米中間選挙では、過激な主張をするトランプ前大統領支持派の候補が相次いで落選した。米国内の党派対立はなお根深いものの、選挙結果を否定するような過激な言説から距離を置く有権者が増えてきた表れとみることもできる。

政治に変化の芽も

欧州ではイタリアで10月に右派政党出身のメローニ首相が就任した。選挙戦中は反移民などで過激な発言を繰り返していたが、政権発足後は外交・経済政策はドラギ前首相の穏健路線を踏襲する意向を示している。予断は禁物だが、過激な主張で支持を集めようとする政治に変化が出始めたならば歓迎すべきだ。

日本では米国のような極端な政治の分断はみられない。しかし、岸田文雄首相は昨年末に相次いで決めた防衛力強化や原発新増設などの大きな政策転換について、国民に丁寧に説明し理解を得る努力が必要になる。

日本は世界の分断修復に外交力も発揮したい。5月には議長国として広島での主要7カ国首脳会議(G7サミット)を主催する。今年から2年間、国連安保理非常任理事国も務める。政権発足時に「分断から協調へ」を掲げた岸田首相の真価が問われる年になる。

コロナ禍からロシアのウクライナ侵攻という未曽有の危機の中で増幅された分断と対立。世界の多くの人々が、この状況から解放されたいと願っている。今年こそ難しい問題を解きほぐし、前に一歩を踏み出す年にしたい。

様々な分断を越え、統合への道へ、進化の道へ向かって歩いていこう。