魔法がかかった言葉

 

村上春樹の新作を読んでいる。

 

内容についてはまだ読まれていない人のために書かないのでご安心あれ。

 

彼の作品を読んでいていつも思うのは、「文章に魔法がかかっている」ということ。

 

彼が魔法の杖を持っている訳ではなく(本当に持っているのかもしれないけれど)、

 

日頃から描写のトレーニングを積んでいることが想像できる。

 

小説の中で出てくる人物や建物、食べ物や音楽について表現する時の言葉の選択や文章の組み立て、比喩。その洗練された言葉たちは、天賦の才能と膨大な読書量を前提とした上で普段から目に入るモノ、光景、置き換え(喩え話)を絶え間無くしている努力の賜物に違いない。

 

ちょうど今開催されているワールドベースボールクラシックの超一流プレーヤーたちの鮮やかな守備のように。

 

彼らが普段からどれだけ大量のゴロを捌く練習をしてきたことか。

 

描写のトレーニング、比喩の訓練、語彙の多様化・・・

 

世界的にも稀有な作家の隠れた努力に想いを寄せながら魔法がかかった物語を堪能している。

  

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編

 

 


 

 

 

 

 

 

ジャムの法則

 

ジャムの法則

 

と言っても、おいしい話ではない。

 

シーナ・アイエンガー(Sheena Iyengar)による実験によって示された法則。

選択肢が多いときは、少ないときよりも判断を下しづらくなるというもの。6種類のジャムを並べたテーブルと24種類のジャムを並べたテーブルの2つを用意したところ、どちらのテーブルでも試食をした人の人数は変わりませんでした。しかし、最終的にジャムを購入した人の割合を見ると、6種類揃えたテーブルの場合は30%、24種類のテーブルではなんと3%、と非常に大きな差が開いてしまった結果から導き出した。選択肢を少なくすることで、顧客のストレスを減らす販売戦略の根拠となっている。

ジャムの法則とは - はてなキーワード

 

選択肢が多過ぎると人は選ばなくなるというのは知っていたけれど、それがこんな実験結果で、こんなネーミングがついているのには驚かされた。

 

選択肢を少なくすることで、ストレスを減らせるのはいいけれど、選択肢が少なくなることで購入という行動に移りやすくなるというのがポイント。

 

海外旅行をしたいな、英語が話せるといいな、お金持ちになりたいな・・・

 

だけでは実現しなくても、具体的な目標にブレークダウンすることで行動に移しやすくなるのと同じ。

 

海外旅行もどこに行きたいのか、いつ行きたいのか、誰といきたいのか? 更にそれぞれの選択肢を絞っていく。

 

英語が話せるとはどういうことか、いつまでに目標を達成するのか、勉強法は?、予算は? 更にそれぞれの選択肢を絞っていく。

 

お金持ちとは? 幾ら貯めるのか? 収入を増やす方法は? 支出を減らす方法は? いつまでに目標を達成するのか? 更にそれぞれの選択肢を絞っていく。

 

行動に移すためには、無限にある選択肢を自ら削っていくことがスタートポイントになる。

 

ざあっと自分のしたいことを頭の中に並べていくと、それがあまりにもたくさんあり過ぎることが行動を妨げていることに気づく。

 

食べたいジャムの選択肢を自ら減らしていこう。

 

まずは山積みになった机を片付けよう。

 

その次は部屋だ。

 

するべきことを一つずつ減らしていくことで、行動が加速していく。

 

未来の僕

 

小さい頃に親から虐待を受けていた子供が大人になり、親になった時、自分の子どもを虐待することがある。

 

子どもの頃、貧乏だったために大人になっても貧しい生活を余儀なくされる人がいる。

 

他方で、小さい頃に虐待を受けていても自分の子どもには一切手を上げない親もいる。幼少期の貧しさをバネに成功者となる人物もいる。

 

その違いは何かと問われると、過去の奴隷になるか、未来の僕(しもべ)を選ぶかの違いだと答える。

 

過去に起こったことに縛られて、過去がこうだったから今の自分はこうなのだという考え方はしんどいだけ。

 

辛い過去を糧にして、未来志向で生きればいい。

 

未来を語り、その未来を自らの手で創り出すことを考えればいい。

 

変えられない過去を悔やむより、まだ見ぬ未来を自分がどう創るのかに専念すればいい。

 

未来の僕(しもべ)になればいい

  

この橋 馬は渡るべからず

 

昨日の日曜日に小学4年生と一緒に参加した親子法律教室は興味深いものになった。

 

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ワークショップ形式で行われた勉強会は、紙芝居形式で物語が語られ、その状況で自分はどう感じるか、どうするか、といういわゆるケーススタディを行なった。

 

その内容はこうだ。

 

昔々ある村がありました。

その村には一本の川が流れていて、反対側に渡るには一本しからない橋を渡るしかありませんでした。

ある日、村で尊敬されている村長さんが橋のたもとに立て札を立てました。そこにはこう書かれてありました。

「この橋 馬は渡るべからず」

それまで渡れていた馬が渡れなくなると反対側に行くには半日かけて大回りしなければなりません。困った村人たちは村長さんに相談しに行きました。

 

屋敷に着くと村長さんの奥さんが出てきて、なんと村長さんが亡くなったことを知らされます。悲しみに暮れながらも村人たちは自然に立て札のことについて話し始めました。

 

ここで司会の人がホワイトボードに貼られた馬と牛と子馬と人のイラストを指しながら子どもたちに質問を投げかける。

 

「皆さんは、馬、牛、子馬、人のうち、橋を通ってもいいのはどれだと思いますか? また、どうしてそう思いますか?」

 

色々な意見が出る中、一番多かったのは、立て札に書いてある通り「馬と子馬はダメで牛と人はいいんじゃないかな」というもの。

 

物語は更に続いていく。

 

次に村人たちはどうして村長さんがその決まりを作ったのか、その理由について考え始めます。

 

「馬は重いから橋が壊れる可能性が高まるからじゃないか?」

 

別の若い女性は言います。「馬はどこにでも糞をしたり、おしっこをしたりするから橋が汚れるからじゃない?」

 

また別の人は自信ありげに「馬は暴れることがあるし、一旦暴れ出したら一人では抑え切れなくて危険だからじゃないか?」と言いました。

 

それぞれの理由を聞いた上で子どもたちはもう一度各テーブルで意見を交わす。

 

馬が重いからと思った人は牛もダメだし、橋を汚すからという理由に賛成する人は、馬も牛も子馬もダメになる。馬は暴れるという理由だと馬以外は通行可である。

 

最初よりも意見の幅がぐっと広がる。

 

紙芝居は続いていく。

 

泣いている村長さんの奥さんを慰めようとすると、奥さんが話し出しました。

 

「違うんです。主人から私宛に手紙が残っていたんです。それを読んで困ってしまって・・・」

 

村人の一人が奥さんの許可を取ってから手紙を読み上げます。

 

「私の命はそう長くはない。私が死んでからもお前が生活に困らないように山の麓に茶店を作っておいた。馬が橋を渡れないと馬を連れた村人たちは大回りをするだろうからその茶店に寄るだろうし、その売上で生活をしていけるだろう」

 

「なんだそりゃ?!」

 

村人たちから驚きの声が上がりました。

 

他方で、これまで村人たちのことを考えて良いルールを作ってきた村長さんのことを考えるとこれもまた良いルールのはずという人たちもいます。

 

次のテーマは、立て札のルールは果たして良いルールなのか悪いルールなのか? その理由と合わせて子どもたちが自分の感じたことを話し合う。

 

奥さん想いの村長さんというイメージがあるからか、意外にも子どもたちは村長の決定は良いルールという声が多かったけれど、いずれにせよ自分の頭で考え、自分の意見を発表する機会は良いこと。

  

法の専門家が言っていたことが心にスッと入ってきた。

 

「唯一の正しい答えというものはないんです。世の中にあるルールも100%良いルール、悪いルールというようなことはなく、人々が住みやすい社会を作っていくためにルールや法律があるんです。それを皆さんと一緒に考えるきっかけを今日持てたことをたいへん嬉しく思います。」

 

ルールや法律にはその意図と背景が必ずある。

 

人も時代も移ろい変わることを考えると同じように見直しされて当たり前。

 

この国には法律のスクラップ&ビルドが必要だ。

 

そのためにも我々市民が知ること、動くことから始めなければならない。

 

あの村人たちのように。

 

 

 

 

 

学問のススメた日曜日

 

あまり深く考えることなく申し込んだ親子法律教室が当たって朝から神戸に行ってきた。

 

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興味深い勉強会の内容はまたの機会に。

 

そのすぐ南側にある神戸地方裁判所は新旧合わさった建築物で狙いは悪くなくとも実際の見かけはなんとも酷い。(今日は青空を背景にして決して悪くないが)

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お昼はポートアイランドにあるIKEAでエスニックランチ。

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その後、バンドー神戸青少年科学館で科学にまみれて半日を過ごした。

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元々はポートピア博覧会のパビリオンを科学館として保存した施設。バンドーがネーミングライツを取ったからかどうかはわからないけれど、一時期よりも随分改善された印象を持った。

 

科学技術立国、観光立国を謳う我が国ニッポン。

 

子どもたちが遊びながら学べる機会をもっともっと拡充していきたい。

 

その萌芽は確実に育っている。

  

「生」食パンを食す

 

「日本の食パン、名品10本。」

 

そのうち一本が比較的近所にあることを聞きつけて足を伸ばした。

 

「乃が美」は元々大阪のお店で「はなれ」と名付けられた支店が彼方此方にできている。

 

そのうち一件に朝10時38分に着くと既に列ができていた。(開店時間は11時)

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メニューは食パンのみで列に並んでいる間に注文が取られる。あまりの人気に一人三本までのよう。

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約40分待って3本ゲット!(接客も最高に気持ちいい)

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家に帰って早速開けてみる。

 

手でちぎって口に運ぶ。

 

最初の一瞬はあまりに普通の食感に感慨は湧かず、落胆しかけた次の瞬間、舌から伝わってくる電気信号のレベルが警報に変わった。

 

「ん? んん?  これは違う! 普通のパンじゃない。甘い!しっとりとしていて食べれば食べるほど美味しい!」

 

何もつけず、ただちぎって口に運ぶ。チラシに書かれてある宣伝文句がまさにそのままといった感じだ。

 

2斤で840円は決して安くはないけれど、「生」を味わう贅沢もたまにはいい。

 

これからも時々お世話になりたい。

 

1500足の先にある使命

 

弱冠26歳の社長さんと出逢う機会があった。

 

イケメンの彼は靴磨きの会社を興し、「長く大切に履くというオシャレ」というコンセプトの下、靴磨きをスタイリッシュで心地いい体験に換える使命に燃えている。

 

「どうして靴磨きだったんですか?」

 

「高校の頃から音楽が好きで、あるライブに行った時にアーティストが履いていたブーツがカッコよくて、それから靴が大好きになったんです。たまたま見たyoutubeのビデオが靴磨きのカリスマで、マイケルジャクソンとか世界的なスーパースターの靴を磨いていて、その動画に感動して、メールを送ったらラッキーなことになんと返事をいただいたんです。それからその人のところに修業に行ったり、世界を見て回ったり、独学で靴磨きを学んで、自分のお店を持ちたいと思ったんです」

 

イケメンでオシャレな好青年はとても謙虚で気さくである。「社長」には到底見えないけれど、靴磨きをカッコいい仕事にしたいという想いは誰にも負けない熱さがヒシヒシと伝わってくる。

 

「あまり何も考えてなくてノリだったんですよね」

 

と言いつつも、自分の夢を確実に現実の仕事や経営にかえるところが掛け値なく凄い。

 

バーのカウンターを思わせる台の向こう側にスーツ姿の彼が立っている。

 

一回25分程度かかる靴磨きは2500円ほどするという。結構いい値段である。

 

「靴によってどんなクリームを使うのか、どんな風に磨くのかって、どうやったらわかるようになるんですか?」

 

そう尋ねると、

 

「誰でも1500足から2000足磨けば自然にわかるようになりますよ」

 

自分の使命を知っている人間の口からは凄いことがいとも簡単に出てくる。

 

一度は彼に靴を磨いてもらおうと思った。