見据える力

見据える力



遠くの一点を「見据える力」が大事なのだという気がしている。



3年連続のNHK大河ドラマ坂の上の雲」がその放映を昨年末に終えた。



上っていく坂の上の青い天に
もし一朶の白い雲が輝いているとすれば
それのみを見つめて坂を上っていくであろう



明治という時代が生み出した三人の若者、秋山兄弟、正岡子規を描いた物語に出てくる言葉。



番組の中でも、戦場で、病床で、彼らが遠くを見据える視線が今でも強く印象に残っている。それ以来、事ある毎に彼らの熱い視線が頭をよぎる。



小説の言葉通り、彼らは坂の上の雲のみを見つめて坂を上っていった。



それは手に届くかどうかはわからない、たとえ届いたとしても決して触れることができない「雲」であったとしても、それを明確なゴールとして、それのみを見つめて生きることができたとも言える。目指すべきものを明確に持っていた彼らは揺るぎない信念を持って生きることができた。



その一途なまでの思いと芯の通った生き方に心を揺さぶられる。



翻って、我々現代人はどうだろう。



帝国主義に翻弄され、国家存亡の危機感に苛まれていた明治人に比べれば遥かに恵まれた生活を送っているにも拘わらず、我々の生き方はあまりにも心許ない。海図なき時代を旅している我々はあまりにも多くの試行錯誤を繰り返し、どこへ向かうべきなのか、どこへたどり着こうとしているのかさえ誰も知らない。わからない。



故にかつての我々の姿に憧憬し、羨ましくさえ感じるのであろう。



そして、自分の信じるものをしっかりと「見据える力」を欲するのだ。



自分が行くべき道を、いつかは辿り着くべき遠い目標に向かって歩いていく道を「見据える力」が。



凛として歩んでいくために。