今年の「月一企画」は映画の感想と学びにすると決めた。
1月はベン・スティラーの「LIFE!/ライフ」。2作目になる今月はスタジオジブリの「かぐや姫の物語」を選びたい。
惜しくも米アカデミー賞は逃したけれど、製作期間8年をかけた高畑勲監督の最新作は驚くほどの完成度の高さと美しさを持った名作中の名作となった。
映画の公式HPの「はじめに」の言葉は美しく、ミステリアス。
この地で、ひとりの女性が生きた。
笑い、泣き、喜び、怒り、
その短い生の一瞬一瞬に
いのちの輝きを求めて。
数ある星の中から、
彼女はなぜ地球を選んだのか。
この地で何を思い、
なぜ月へ去らなければならなかったのか。
姫が犯した罪とは、
その罰とは何だったのかー
日本最古の物語文学「竹取物語」に隠された
人間・かぐや姫の真実の物語
姫の犯した罪と罰。
劇場に観に行かなかったのは大きな間違いだった。
大きなスクリーンで最高の音質で「鑑賞」したかった。
そう感じさせるほどの完成度の高さ。製作に8年かかったのは高畑監督の完全主義の表れであり、おかげ。
物語自体は我々日本人が慣れ親しんだ「かぐや姫の物語」でそこにサプライズはない。
にも拘わらず、ここまで感嘆の声と溜め息が同時に漏れるのは映画全体に脈打つ生命力であり、命の強さであり、儚さ=生きることそのものが描かれているから。
ジブリのアニメーター一人ひとりの手によって描かれた人物がまた別の一人ひとりによって描かれた背景に溶け込み、完全なる調和が成し遂げられている。
丁寧に、心を込めて描かれた一コマ一コマが登場人物の喜び、悲しみ、笑い、怒り、移ろいゆく時間=生を見事に表している。
それが我々自身の生にも繋がっている。
この物語は我々自身の物語。
彼女の人生は我々自身の人生。
どこから来て、どこへ帰っていくのか。
我々もまた
何も持たず生まれてきて、何も持たずこの世を去っていく。
我々自身の罪と罰。
この映画が心に染み入るのは
我々自身の生と死を投影しているからなのではないか。
そんな風に感じた。