野犬狩りの隊長

 
知り合いに野犬狩りの隊長がいる。
 
 
と言っても、フルタイムの仕事ではない。
 
 
地方都市のこれまた外れに住んでいる知り合いで町内会の男性にお鉢が回ってくる役どころとのこと。
 
 
それでも「野犬狩り」という言葉を初めて聞いた時は自分の耳を疑った。
 
 
次の瞬間、頭の中に様々な光景が勝手に描き出される。
 
 
痩せ細って目だけはギラギラしているあちらこちらの毛が抜けた雑種犬。手足が異常に細くて長い。まだ小さい子犬たちを守るために人間たちを目の前にして憤然と立ち向かっている姿。山中に住んでいて、食料を求めては畑に出てきて人間に見つかり逃げて行くシーン・・・
 
 
次は疑問が浮かび上がる。
 
 
野犬???
 
 
昭和初期や戦時中、戦後間もない時期ならまだしも21世紀に生き残っている野犬というのはどんな種類でどれほどの数がいるのだろう? どんな被害があるのだろう? どうやって捕まえる? 捕まえられた野犬はやはり処分されてしまうのだろうか?などなど。
 
 
想像はやがて妄想の域に入っていき、勝手に空想の世界を自由に泳ぎ回る。
 
 
この21世紀に昔ながらの野犬など存在するはずもなく、ペットとして飼われていた犬たちが野に放されただけではないか。
 
 
頭の中にはこんな光景が広がる・・・
 
 
ポメラニアンやチワワが少しやさぐれた感じがありながらも強く生き抜き、草原に凛として立ち並んでいる姿、一時はあちらこちらでみかけたシベリアンハスキーが山の中を狼の如く駆け抜け、崖の上で遠吠えしている姿、トイプードルやパグやコーギーが生き残り、やがて交配を繰り返し、見たこともない姿の小型犬がうようよしている姿であったり・・・
 
 
ふと我に返っても疑問はつきない・・・