「私、人前で話をするのが苦手なんです。」
そう言って始まったプレゼンテーションは素晴らしい内容だった。
確かに、プレゼンテーション自体は上手とはお世辞にも言えない。
緊張しているのは一目見てわかるし、声も小さく笑顔もない。しゃべりも稚拙で時折何を言っているのか聞きづらい時さえある。
それでも聞き取れる内容が素晴らしいことはしばらくするとよくわかる。
話者の人柄のよさが、想いの純粋さと深さが、とつとつと話される下手なスピーチから不思議なほど伝わってくる。
プレゼンテーションの巧拙は、立て板に水を流すような話し方にはなく、身振りや手振りでもなく、ましてやパワーポイントで作成された綺麗なレジュメにあるわけではない。
要は、テクニックではなく、話者の普段の取り組みであり、その成果、そして、それを支える想いの強さであり、誠実さであり、人格なのではないかという気がした。
今日体験した「下手で素晴らしいプレゼンテーション」は多くの人の心にじんわり染み渡り、気がつくと自分の目元もしっとりと潤っていた。