樵の斧

「樵」



は「木こり」と読む。



有名な話を思い出した。



一人の樵が斧を使って熱心に木を切っていた。



そこを通りがかった旅人が不思議そうに尋ねる。



「どうして斧の刃を研がないんだい?刃を研いだ方がもっと早く、もっと楽に木を切れるようになるのに」



「そんな時間はないよ」



そう言って、樵は懸命に木を切り続けたという。



説明する必要もないのではないか。



我々も同じ罠に陥っていることが往々にしてある。



日々必死になって仕事をして充実感を感じていても、時間がないと不満に思っていても、もしかすると「刃を研ぐ」ことでより早く、より楽に木を切ることができるようになるかもしれない。



場合によってはチェーンソーを持つことさえできるかもしれない。



自分の斧の切れ味を最後に確かめたのはいつだろう。



仲間の斧の刃を研いだのはいつだったろう。