ABC予想を考える

 

新型コロナ対策として東京ほかの都市で緊急事態宣言が発出されたのは4月7日。その3日前に数学の難問「ABC予想」が証明された。

 

厳密に言うと、2012年に京都大学の望月慎一教授が「証明した」として発表した論文が8年近くの検証を経て正しいと証明されたとのこと。

 

https://kadobun.jp/feature/interview/99h8kwdhgaw4.html

 

望月教授の構築した理論は斬新過ぎるゆえ「未来からきた理論」「数学の相対性理論」とも言われ、世界中でも理解できるのは十数人しかいないと言われているという。

 

中学2年生の娘の数学テストの「テスト直し」に付き合ってこんな難しくも面白い内容に出会った。

 

まず、「ABC予想」を考える上で、3つの自然数a,b,cについて、以下の①と②の条件を同時に満たさなければなりません。

 

  ①aとbは1以外の共通な約数を持たない自然数

  ②c=a+b

 

これをふまえて「ABC予想」を紹介します。今回証明された「ABC予想」は以下のように表されます。

 

ABC予想】(一般的な場合)

 a,b,c(=a+b)のそれぞれの素因数を全てかけた数をrad(abc)と表すと、

    K ×{rad(abc)}¹𝜖^1ε > c  

が成り立つ。ただし、Kはε(イプシロン)によって決まる定数で、ε>0、 K≧1 とする。

 

ただし、これでは意味がまったく分からないので、非常に限定された場合(ε=

1, K=1の場合)で考えると以下のように表されます。

 

ABC予想】(非常に限定された場合)

a, b, c(=a+b)のそれぞれの素因数をすべてかけた数をrad(abc)と表すと、

 {rad(abc)}²>c

が成り立つ。

 

ここで使われている「rad(abc)」の説明をしましょう。「rad(abc)」とは、簡単にいうと「abc(=a x b x c)」の素因数(=素数である約数)の積」です。具体的な数で説明します。

 

例えば、a=8, B=25のとき(aとbは1以外お共通な約数をもたない)、c=a+b=33となります。

 

  a x b x c =8 x 25 x 33 = 2³ x 5² x 3 x 11

 

となるので、rad(abc)は、(   )内の数の素因数だけを抜き取って掛け算をします。つまり

 

  rad(abc)= 330² =108900となるので、これはc(=33)より大きい。

つまり {rad(abc)}²>cが成り立つ、ということになります。

 

 以上が、非常に限定された場合での「ABC予想」の説明になります。一般的な場合の「ABC予想」は超難解なため、とてもここで扱うことはできません(世界中で理解できる人が十数人なのですから・・・)。

 

非常に限定された場合での「ABC予想」の説明だけでは実感しにくいですが、「ABC予想」の解決は、いまだ解かれていない様々な数学的問題を解決する、あるいは既に解かれている問題の解決方法が大幅に短縮する、大きな可能性を秘めていると言われています。そしてそれは数学や科学技術の発展につながっていきます。

 

普段、ネットやニュース番組、新聞なので数学取り上げられることは稀です。しかし日頃から情報のアンテナを広げ、多方面に関心をもつことができれば、より充実した毎日を送ることができると思います。

 

 

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つい先日まで膝の上に乗っていた娘がこんな難しい数学の問題に取り組んでいたなんて・・・

 

数学の世界も思春期の娘の世界も普段考えない新しい世界に触れられて自分の世界が広がった気がした。