大きな商店街に人が戻ってきた。
人波が川のように流れていく。
流れに乗って歩いている限り問題ないが、立ち止まった途端、川の中の岩のように人流れが二手に分かれていく。
流れに乗っている間は周りと同じで問題はない。
立ち止まった瞬間、後から来る流れの邪魔になり、存在自体が根本から変化する。
水から岩へと。
流れているからこそ感じるスピード感とどこかへ向かっている高揚感。皆と一緒だという安心感と一体感。
岩になった瞬間、その感覚は掻き消され、全く異なる景色と感覚に包まれる。
定点から眺める景色は衝撃的だ。一つひとつの形がくっきりしていて色が濃い。自分が静止していることで周りの動きを敏感に感じ取れる。
周りの速い流れの中で静止し続けるのは決して容易くはない。
孤独であり、強く、重くなければならない。
どっしりと、悠然と。
川の中の岩に想いを馳せる。
人の戻ってきた商店街の中心で。