千本桜

 

千本桜という曲がある。

 

ヤマハが開発した音声合成技術、ボーカロイドを使用して作られた曲で2011年に黒うさPという人の作詞作曲だという。

 

そのテンポの速さや明治維新後の西欧文化を取り入れた時代を背景にした古さと現代に通ずる風刺的な内容で大ブレークした。

 

ボーカロイドの可能性や自己表現の楽しさについて考えることもできるけれど、今日はこの曲が大ヒットした原因の一つとして「難しい言葉」「難しい漢字」を挙げてみたい。

 

まずは曲を聴いたことのない人のために動画と歌詞を見ていただこう。

 

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大胆不敵に ハイカラ革命
(だいたんふてきに はいからかくめい)
磊々落々 反戦国家
(らいらいらくらく はんせんこっか)
日の丸印の二輪車転がし
(ひのまるじるしのにりんしゃころがし)
悪霊退散 ICBM
(あくりょうたいさん あいしーびーえむ)


環状線を走り抜けて 東奔西走なんのその
(かんじょうせんをはしりぬけて とうほんせいそうなんのその)
少年少女戦国無双 浮世の随に
(しょうねんしょうじょせんごくむそう うきよのまにまに)


千本桜 夜二紛レ 君ノ声モ届カナイヨ
(せんぼんざくら よるにまぎれ きみのこえもとどかないよ)
此処は宴 鋼の檻 その断頭台で見下ろして
(ここはうたげ はがねのおり そのだんとうだいでみおろして)

三千世界 常世之闇 嘆ク唄モ聞コエナイヨ
(さんぜんせかい とこよのやみ なげくうたもきこえないよ)
青藍の空 遥か彼方 その光線銃で打ち抜いて
(せいらんのそら はるかかなた そのこうせんじゅうでうちぬいて)


百戦錬磨の見た目は将校
(ひゃくせんれんまのみためはしょうこう)
いったりきたりの花魁道
(いったりきたりのおいらんどうちゅう)
アイツもコイツも皆で集まれ
(あいつもこいつもみんなであつまれ)
聖者の行進 わんっ つー さん しっ
(せいじゃのこうしん わんっ つー さん しっ)


禅定門を潜り抜けて 安楽浄土厄払い
(ぜんじょうもんをくぐりぬけて あんらくじょうどやくばらい)
きっと終幕は大団円 拍手の合間に
(きっとさいごはだいだんえん はくしゅのあいまに)


千本桜 夜ニ紛レ 君ノ声モ届カナイヨ
(せんぼんざくら よるにまぎれ きみのこえもとどかないよ)
此処は宴 鋼の檻 その断頭台で見下ろして
(ここはうたげ はがねのおり そのだんとうだいでみおろして)

三千世界 常世之闇 嘆ク唄モ聞コエナイヨ
(さんぜんせかい とこよのやみ なげくうたもきこえないよ)
希望の丘 遥か彼方 その閃光弾を打ち上げろ
(きぼうのおか はるかかなた そのせんこうだんをうちあげろ)


環状線を走り抜けて 東奔西走なんのその
(かんじょうせんをはしりぬけて とうほんせいそうなんのその)
少年少女戦国無双 浮世の随に
(しょうねんしょうじょせんごくむそう うきよのまにまに)


千本桜 夜ニ紛レ 君ノ声モ届カナイヨ
(せんぼんざくら よるにまぎれ きみのこえもとどかないよ)
此処は宴 鋼の檻 その断頭台を飛び降りて
(ここはうたげ はがねのおり そのだんとうだいをとびおりて)


千本桜 夜ニ紛レ 君が歌い僕は踊る
(せんぼんざくら よるにまぎれ きみがうたいぼくはおどる)
此処は宴 鋼の檻 さあ光線銃を撃ちまくれ
(ここはうたげ はがねのおり さあこうせんじゅうをうちまくれ)

 

その圧倒的なスピードと言葉(漢字)の難しさに妙な爽快感さえ感じられるのではないだろうか。

 

流動食を食べ続けていると固いものが食べられるなくなるのと同じようにネット社会では素早く読める、意味を取れる、簡単さが重要になっていて、気がつくと難解な文章や理解しがたい本が敬遠されるようになっている。

 

そこに降りかかったのが千本桜。

 

その難解さと裏の裏に秘められた物語や現代社会への批判に無意識のうちに若者が飛びついたのではないか。

 

流動食では飽き足らず、噛み応えのある、噛めば噛むほど味が出てくる、そういったモノを求め始めている象徴なのではないか。

 

カラオケで子ども達が歌う姿を見てふとそんなことを考えた。