長年、第二次世界大戦、太平洋戦争、「あの(馬鹿な)戦争」に突入した理由を探し求めてきた。
その答えが見つかった。
十二月六日、芸能家にして随筆家の徳川夢聲が日記に殴りつけるようにして書いた。
「日米会談、相変わらず危機、ABCD包囲陣益々強化、早く始まってくれ」
作家司馬遼太郎が平成3年(1991)十二月、産経新聞連載の「風塵抄」にまことに当然きわまることをかいている。長く引用する。
「現実の日本は、アメリカに絹織物や雑貨を売ってほそぼそと暮らしをたてている国で、機械については他国に売るほどの製品はなかった。/地上軍の装備は日露戦争当時に毛がはえた程度の古ぼけたものであった。海軍の場合、石油で艦船がうごく時代になったため、平時でさえ連合艦隊が一ヶ月も走れる石油はなかった。/その石油もアメリカから買っていた。このような国で、大戦争など、おこせるはずがなかったのである」
おそらく当時にもそうした声はあったことであろう。でも、そんな声はかぼそいもので、「早く始まってくれ」という心身ともに憤った、熱狂した多数によって黙殺されてしまった。つまり日本人はその程度にしか賢明でなかったということになる。近代日本にになっていらい敗けたことのない無敵日本という自己過信、アメリカの国力に対する無知、ドイツの勝利への根拠なき確信、そしていまや好戦的と変わった国民の心情などなど、そんな愚かさの総和が、結局は大戦争へと突入することを許容してしまったのである。
半藤一利氏の昭和史1926→1945 B面のP396-397に長年探し求めてきた「答え」が平易な言葉でシンプルに書かれていた。
これまで難しく考え過ぎていたみたいだ。一瞬で霧が晴れたような気分になった。
あと2時間ほどでトランプ米大統領が誕生する。
それが「愚かさの総和」だったとならないよう今から祈っている。