あの、どっかにお出かけだったんですか?
あ、ちょっとな。叫んできたんだ。
え?
お父ちゃん、えっと、父が目撃された場所で。ね。
でっけぇ声でな。お父ちゃんの馬鹿野郎ってな。
いいね、それ。
だっぺ。
馬鹿野郎って言いたい相手が150人ほどいる。
150人?
ずいぶんいんなぁ。
はい。
でもよぉ、みね子、あれだっぺ。思ってることをよぉ。カッコつけずに思いっきし叫ぶとなんだか力が出っぺ。それに笑えっぺ。なんだか。
それがビートルズだ。
んだから好きなんだぁ。俺は。何でもいいんだ。難しいことでなくていいの。何でもいいんだ。腹立つことでも。仕事休みてぇでも。あの子が好きだぁ。でも。何でもいいんだ。ん。今思ってることをな、叫ぶんだ。音楽に乗せてな。エレキギターでよ、うえぁ〜ってでっけぇ声で叫んでて、うっせぇわって思うかもしんねえけど、でも、あれはできるだけ遠くまで届けるためになんだ。気持ちをな。だから、でっかい音なんだ。ん。だからよぉ。聴いてっと、何だか一緒に声出してるみたいな気分になって、心が晴れんだ。一緒に歌いたくなるんだ。でよ、それがレコードっとかになっと、イギリスから茨城まで届くんだ。すげえよね。
あの、チケットは手に入っんですか?
いや。いいんだよ。そんなもんは。無くても。俺はな。あいつらが東京に来た時に一緒に東京にいるだけで十分なんだよ。
星があんまし見えねえな。ここでは。
んだね。
でもよ、若者諸君、見えねえだけで、ないわけじゃねえぞ。わかっか?
ん。
東京で待ってっぞぉ! ビートルズぅ!
宗男さんの茨城弁が心に滲み透る。
さて、 我々は何を叫ぼう?