今年の月一企画 「不識塾 課題図書」の5回目はこの1冊を選んだ。
今年の月一企画のきっかけとなった「不識塾が選んだ『資本主義以後』を生きるための教養書」に掲載されている「不識塾の課題図書一覧(平成24年度分)の最初に選ばれている一冊。
数多ある日本論、日本人論があまりにも自虐的で偏った視点(「菊と刀」的な日本人論、「あいまいな日本」、「戦前とあの戦争を全否定する歴史観」)に捕われていることを嘆く著者が異なる視点から日本を伝えるために書かれている。
読み始めてすぐに衝撃を受けた。
それは今まで心のどこかに引っかかってとれない棘のようなものが明確に言葉で表されていたからであり、眉つばモノと思っていた話が確度の高い情報に裏付けされていたから。(その確認を個人的に取ったわけではないけれど)
例えば、こんな言葉や記述が挙げられる。
- 「終戦」という嘘(敗戦ではなく)
- あの戦争はソ連(コミンテルン)によって日本が引き込まれた戦争だった
- あの戦争は「愚かな戦争」であり、「悲惨な戦争」であったが「栄光の戦争」という見方もある
- 「アジア主義」こそ、昭和の日本の進路を狂わせた一番の魔物だった
- 戦後の悲しき真実として戦後日本は社会主義の実験場だったこと
- 天皇 世界に類なき君主、天皇とは祈る君主なのです
- 「開かれた皇室」論の勘違い
- マッカーサーの対日占領政策の根幹にあったのが皇室の弱体化(宮家の廃止は皇位継承者減が目的)
- 日本人の美意識は神道から由来する
- 日本文明 この独自なる文明
- 日本を愛することとは日本文明を愛すること
第二次安部内閣発足以来右傾化が心配されていることが頭を過らないではないけれど、日本人の一人として、歴史認識に疑問を持つ一人として著者の熱い想いとこの国に対する愛情に共感する部分も少なくなかった。
全てを鵜呑みにするのではなく、一つの考え方、観方として、建設的な批判精神を持ってさえいれば間違いなく「日本人としてこれだけは知っておきたいこと」。
更なる好奇心、知的探究心を呼び醒まされる一冊となった。
最後にラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の絶筆となった「日本」からの抜粋を掲載したい。
日本が自分の先祖の信仰から、もはやこれ以上何も得るものはないと考えるのは、これは悲しむべき誤った考えである。日本の近代における性向は、ことごとく、この力によって助けられたものであると同時に、日本の近代化における失策は、すべてみなこの国古来の倫理上の風習を必要もないのに破棄したために起こったことも明らかである。
我々はもっともっと日本の歴史や日本人の心を囚われのない、曇りのない目で見なければならないと感じた。