小学3年生の娘の宿題、音読につきあった。
今日の読み物はあの「モチモチの木」だ。
私が小学生の頃、同じ3年生の時だったように記憶しているけれど、それ以来の再会に静かに感動。
タイトルと話の雰囲気は心の中にずっと残っていたけれど、物語はすっかり抜け落ちていた。その分、娘の音読に耳を澄ませる。
豆太はじさまと一緒に暮らしている。
おくびょうな豆太は五つになっても夜中に一人でせっちんに行けない。じさまについてきてもらわないと用も足せない。
小屋の前に立っているモチモチの木が怖いのだ。
その木は昔から霜月二十日(しもつきはつか)の晩に火が灯ると言われているそうな。
山の神様のお祭りだという言い伝えがあり、勇気のある子どもだけが見ることができるという。
じさまもおとうも見たから豆太も見たいけれど、おくびょうな自分が見られるとは到底思えない。
その夜、じさまの唸り声に豆太は目を覚ました。お腹が痛くなって熊みたいに体を丸めて唸り、転げ回る。
じさまが死んでしまうと心配した豆太は医者様を呼びにふもとへ走った。
外はすごい星で、月も出ていた。とうげの下りの坂道は、一面の真っ白いしもで、雪みたいだった。しもが足にかみついた。足からは血が出た。豆太はなきなき走った。いたくて、寒くて、こわかったからなぁ。
医者様を呼んで、大好きなじさまの元へ帰ってくると小屋の前で豆太は不思議なものを見る。
モチモチの木に灯がついている!
医者様が言う。
あ。ほんとだ。まるで灯がついたようだ。だどもあれは、トチの木の後ろに、ちょうど月が出てきて、えだの間に星が光っているんだ。そこに雪がふってるから、明かりがついたように見えるんだべ。
医者様のおかげで腹痛が治ったじさまは翌朝豆太に話す。
おまえは、山の神様の祭りを見たんだ。モチモチの木には灯がついたんだ。おまえは一人で夜道を医者様呼びに行けるほど勇気のある子どもだったんだからな。自分で自分を弱虫だなんて思うな。人間やさしささえあれば、やらなきゃならねえことは、きっとやるもんだ。それを見て他人がびっくらするわけよ。ははは。
良いものは良い、変わらないものは変わらない。
数十年前から同じ作品が相も変わらず教科書で扱われていることに一瞬心配をしたけれど、そのわけがわかったような気がした。
変えてはいけないものがある。
たとえ時代が変わったとしも。