地方のとあるスーパーマーケットに入ると魚が驚くほど安かった。
なんて、のほほんと写真を撮っていると、
「業界の人ですか?」
と、中から屈強の魚屋さん風の人から尋ねられた。
「いえ、違います」
と答えるも、
「写真撮影はお断りしているんです」
と半ば怒り顔で言われ、すみませんと言って退散した。
確かに無断撮影はよくなかったかもしれないけれど、ライバル会社どころか口コミ宣伝として案内したかったものをあんな口の聞き方をするなんて!
と、後から段々腹が立ってくる。
次の瞬間、自分が彼の立場だったら同じように対応していたかも、とも。
また反対に、たとえライバル会社だったとしても真似されるような仕入れや値段設定しかできないのなら所詮それまでだな、との思いが過ぎる。
立場が違えば、感じ方も対応の仕方も変わる。
それぞれの立場で他者に恥じぬ、誇りに思える働き方をしたいもの。
驚くほどの鮮度と安さを兼ね備えた品揃えに敬意を評して、苦情を飲み込んだ。
それでいい。