奇なりな話 ー転落ー

 

50代後半の女性からこんな話を聞いた。

 

その人が嫁いだとき、夫の父親、つまり義父が納税額日本一になったという。

 

代々続く家業を継ぎ、時代の変遷の中で駅前に所有する膨大な土地を売却し、その売却益で気がつくと一年間だけ納税額全国一位になったそう。

 

それでも資産家であることに違いはなく、結婚したときには世界中に所有している不動産、家の鍵の束をジャラジャラさせながらどこに住んでもいいよと言われたらしい。

 

しかし、そんなうまい話は長続きしない。

 

結婚して3年後には不動産売却益で購入した株式が暴落し、資産のほとんどが消え失せ、代々続いてきた商売も畳まざるを得なくなってしまったという。

 

しかも義父は失意のうちに旅行先で不慮の事故で突然死してしまった。

 

なんという悲劇だろう。

 

そこに唯一救いがあるとすれば、話をしてくれた女性はそんな義父の転落を目の当たりにしながらも自分を失うことなく普通の仕事を続け、普通の生活を送っていること。

 

この世には小説よりも奇なりな話が間違いなく存在する。