列に並ぶ

列に並ぶことが昔から嫌いだった。



理由を深く考えたことはなかったけれど、改めて考えてみると三つに集約されることに気がついた。



一つは時間の無駄遣いだと思っていたこと。二つ目は並んだ結果として得られるものへのこだわりがなかったこと。三つ目は他にやりたいことが幾らでもあったから。



それでも最初にその思いが溶け始めたのはマジックマウンテンというカリフォルニアにある遊園地を訪ねた時のこと。絶叫系マシーンがひしめく大人気の遊園地はどのライドにも長い列ができるだけに並んでいる人を飽きさせない工夫がそこかしこに凝らされていた。テレビモニターが置かれ、ライドの説明や他のライドやショーの紹介、キャラに扮装したスタッフがお客さんを楽しませたり、ここまでするか!というほどの手のかけよう。列に並ぶことを苦痛に感じさせないどころか列に並ぶこともそのライドの一部のような演出には驚き、感激した。



失敗した例としては、横浜の中華街を訪ねた時に時間節約のために誰も並んでいないお店に入ったら、「THE失敗」だったこと。そして、先週の花火大会で列のない焼きそばを買ったらありえないほどのまずさだったこと。焼きそばなんてまずく作ることができないと思っていたのに・・・



だからと言って今も列に並ぶことが好きなわけではない。



それでも昔ほど厭わなくなったのは、それが嫌だった理由の最初の二つが緩和されてきたから。そして、やりたいことが無くなることはないけれど、今を生きることの大切さを学んだから。



列に並ぶことさえも楽しみの一部と捉えられるようにこれからも修行を積んでいこう。