「下手に出る」(したてにでる)という表現がある。
へりくだって応対することで相手を上にあげる=尊重すること。言葉の裏側には相手を上にあげて尊重するように見せかけて、実は自分が利を得るというニュアンスが隠れていることもある。「下手に出ればつけ上がりやがって・・・」と素直に上に祭り上げられた人が調子に乗ることで下手に出た人の怒りを買うこともある。
いずれにせよ自分と他人との関係性を上下関係の中で語る典型的な表現。
この国では儒教をベースにした年長者を敬うという習慣(年齢順)と組織の役職順という上下関係が網の目のようにびっしりと社会の中に張り巡らされている。
最近では多少ほぐれてきたとは言え、数百年かけて続いてきた習慣はそう簡単には変わらない。
それでも世界的な競争やそれに伴う生き残りをかけた競争をきっかけに大きな変化の潮流を感じる機会があった。
テレビの経済番組を見ていた時のこと。
長年下請けに甘んじていたとある中小企業が急減する大企業からの発注に危機感を覚え、自ら完成品を作ることを試み、世界的なヒット商品になっていくというエピソード。
大手からの発注にどうすれば対応できるか、受注することばかりを考え続けたことで思考が受け身になっていたことから脱出することが一番たいへんだったと社長が語っていたことが印象的だった。
下請けであれば上からの依頼業務に応えるだけだったのが、完成品を作るということはそれをどう売るのか、売れる商品にするためにはどんな工夫が必要なのか、我々の強みは何なのか、思考の仕方自体を根底から変えなければならない。
しかし、それがその会社の転機となり、経営危機から脱出する大きな原動力となった。
上下関係の中で下請けに甘んじていたけれど、それまで培ってきた技術力と創造力をフル活用し、新しいマインドセットで攻めに転じた。
番組の最後には新たな武器を手に入れたその会社の社長さんが大企業と仕事をする時に上下関係ではなく、パートナーとして対等に話ができることに喜びと緊張感があることを嬉しそうに語っていた。
もうこれからは下手に出る必要はない。
横手に出ればよい。
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