疑問と確信を持つ

 

「まず疑問を持ち、そして確信を持て」

 

世界一と言われている経営コンサルティング会社マッキンゼーのトップコンサルタントの名言・・・

 

ではなく、航空自衛隊のF15戦技課程、小松基地の第6航空団所属の山下智士(38、1等空尉)の言葉。

 

今日の日本経済新聞の「自衛隊 精鋭たちの組織論」という特集を読んでハッとした。

 

マッハ2.5で特訓 空自「トップガン」養成所:日本経済新聞

航空自衛隊で戦闘機を操るパイロットたちが憧れる教育課程がある。主力戦闘機「F15」のパイロットのトップエリートを育てるF15戦技課程だ。「ファイターウェポン」と呼ばれ、毎年、適齢の20歳代後半から30歳代前半ごろの数百人の中から数人が選ばれる。1980年代に大ヒットしたトム・クルーズ主演のハリウッド映画「トップガン」が描いたのは米海軍のエリート養成機関。こちらはいわば空自版トップガン養成所だ。

 

■「飛行機の操縦だけなら日本一」2018年8月末、空自小松基地(石川県小松市)。第39期生として集まった「学生」は、パイロット4人、攻撃などの指示を出す要撃管制官2人の計6人だった。地元、小松基地の第6航空団に所属する山下智士(38、1等空尉)はその1人。適齢は過ぎていて、最年長として学生長を務めた。

 

「飛行機の操縦だけなら日本一」と豪語する自信家だ。幼い頃から乗り物好きで「乗り物の能力を最大限引き出したい」とおぼろげな思いを抱いていた。その願いをかなえる仕事が戦闘機のパイロットかもしれない、と航空学生として空自を志望した。兄も陸上自衛官で、自衛隊は身近な存在でもあった。戦闘機パイロットは数ある自衛隊の職種の中でも狭き門だ。高校などを卒業し、航空学生に受かるには、約50倍の倍率を突破しなければいけないこともある。航空学生から戦闘機のパイロットになれるのはさらに半数程度だ。戦技課程に参加できるのは、その頂点といえる。

 

■「チームで戦う」を学ぶ戦技課程は約半年間、戦闘機同士の戦闘訓練を繰り返して技術を磨く。F15の最大速度はマッハ2.5に及ぶ。最大9G、つまり重力の9倍の負荷が全身を襲い、思考や判断能力が大きく低下する。判断力が3割程度になるという意味で「3割頭」といわれる。山下は部隊配属中、わざとにぎやかなところで勉強したり、考えごとをしたりして、判断力を失わない工夫をしてきた。

通常の部隊では、パイロットの能力にばらつきがあり、技術レベルを下の方に合わせた訓練になりがちだ。戦技課程は全国から集ったハイレベルなパイロット同士、自らの技術を極限まで高める訓練に集中できる。山下はさらに高みをめざし、夢中になって操縦かんを握った。

一方で、大事なことにも気づかされた。「チームで戦う。誰かを蹴落とすのではなく、それぞれの役割を進めていく」というチームプレー。4機で訓練する場合、個人技に加えて4人のパイロットで組織的に戦闘することの重要さが求められる。自信に満ちたエリートが忘れがちなことだ。

 

■操縦に「なんとなく」はダメ「育てがいがあるなあ」。戦技課程を指導者として統括する当時、第6航空団飛行群司令だった柳享範(46、1等空佐)は、第39期生を鍛えながらこう思ってきた。

飛行の技術は一定の水準に達しているが、まだ足りない。自分のミサイルをどう撃つか、どう回避するか、状況判断や味方の戦闘機との連携などはなお途上だ。「まず疑問を持ち、そして確信を持て」。柳が学生たちに求めたのは、徹底的な思考の訓練だった。

 

入隊直後は教官や先輩の技術を見よう見まねで習得すればいい。だがリーダーとして技術を伝えていくためには、「なんとなく」ではなく筋道を立てて論理的に説明できなければいけない。柳は「戦闘機に乗らされているようじゃダメだ」と力説する。操縦の技術を教える立場に長く就いてきた。以前は飛行教導隊長という役職だった。飛行教導隊は「Aggressor(侵略者)」と呼ばれ、訓練で仮想の敵役を務める。他国の戦い方を研究し尽くし、各部隊のパイロットに実戦さながらの訓練を施す。「自分ができないことは人に教えられない」。戦技課程でこれを若いパイロットにたたき込む。

■1時間、学生を質問攻め

飛行訓練は1回あたり約1時間。基地に戻り、まず1時間、自身の飛行を解析する時間を与える。その後は教官の出番だ。「失敗の原因は何なのかを考えろ」。柳の下で教官役を務める佐土原寛之(48、3等空佐)らは、1時間かけて学生を質問攻めにした。佐土原は「あえてアドバイスをせずに、わざと失敗させる。降りた後に自分で間違いに気づかせるプロセスが大事だ」と言う。

飛行訓練だけではない。F15や他の装備を組み合わせて、相手にどう対応するか作戦を練る座学の時間もある。「徹夜してでも直してこい!」。柳は提出された学生たちの課題を何度も突き返した。

「これまでも常に色々考えているつもりだったけど……」。自信家の山下も、未熟さを痛感させられた。絶対に勝てる戦い方は存在しない。答えのないことでも追求していく。その過程に終わりはないが、欠かせないことだ。

 

「もっと成長するためには…」半年の課程を終えるころ、柳は学生たちの変化を感じとった。相手の背後に回り込むタイミング、攻撃のかわし方、武器の使い方――。無駄が少なくなってきた。「スマートな戦い方ができるようになった」。柳は学生たちの成長を喜んだ。

修了式前日の19年2月19日。柳は学生6人を集め「この課程に満足したか」と問いかけた。返ってきた答えは全員同じだった。「満足していません」。もっと成長するにはどうすればいいのか――。そんな問いかけを続けることこそ、教え込んだ重要なことだった。

 

後略

 

一瞬一瞬の判断が命取りになる究極の仕事を支えるのが徹底的な思考の訓練だという。

 

タワー・オブ・ロジック<論理の塔>を積み上げるためにも疑問を持ち、筋道を立てて論理的に物事を考えるトレーニング積み続けたい。

 

自分のしていることに、

 

生きることに確信を持つために。