押さないボタン

 

エレベーターの中でのこと。

 

同僚と二人でエレベーターに乗り込むと大きな外国人と普通の日本人がそれぞれドア脇のボタンの前に立っていた。

 

我々は目的階のボタンを押して、奥の角にそれぞれ移動した。

 

ある階に着いてドアが開き、ドア脇の日本人が出ていった。

 

ドアは開いたまま沈黙の空気が流れる。

 

思わず一歩前に出て閉まるボタンを押そうと考えたものの「外国人は閉まるボタンを押さない」というかつて聞いた話が本当かどうか試そうと思った。

 

数秒という長い空白の時間が経ってようやくドアが閉まる。

 

案の定その外国人は閉まるボタンは押さなかった。

 

その後我々の階が来て同僚とエレベーターを降りて廊下を歩き出した瞬間その同僚が口を開いた。

 

「ホントに閉まるボタン、押さないんですね」